ONE-UP代表取締役社長・中元志都也氏へのインタビューを実施―海外展開のエピソードや今後の展望を語る

ONE-UP代表取締役社長・中元志都也氏へのインタビューを実施―海外展開のエピソードや今後の展望を語る

2012年06月28日 13:00

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先日、アジア地域で「みんなで牧場物語」のサービスを開始するなど、海外展開を進めているONE-UP。その戦略と今後の展望について、代表取締役社長・中元志都也氏にお話を伺った。

中元志都也氏
中元志都也氏

――アジア地域を中心に、積極的に海外展開を行なってきたその狙いについてお聞かせください。

中元氏:弊社では最近、突然に海外展開を行なってきたというわけではなく、前社長の椎葉さん(現・Aiming代表取締役社長の椎葉忠志氏)が、「ブラウザ三国志」が成功してからの次の一手として、海外展開を行なっていきたいという思いが強くあり、そこでご縁があった私が、2010年6月に海外事業全般を見るという立場で入社することになって以来、足掛け2年ぐらいずっと行ってきました。

私自身が前職で、海外でのネットワーク事業の事業開発やM&A事業を行なっていましたので、そのネットワークを生かし、まずは国内でヒットしていた「ブラウザ三国志」を海外にライセンス展開していきました。

今日までに、ネクソンさん(ネクソンコリア)が運営しています韓国をはじめ、台湾、香港、シンガポール、マレーシア、タイ、フランスといった地域でサービス展開してきました。

その次に、マーベラスAQLさんのIPである「牧場物語」のブラウザゲーム「みんなで牧場物語」を開発し、アジア展開のライセンス権を持っていましたので、1年ぐらい前から準備を進め、今月に香港、台湾、シンガポール、マレーシアでサービスインし、近く、日本発企業ではおそらく初となるインドネシアでのパブリッシュも予定しております。

また、タイでの契約も締結し、秋ごろにローンチ予定となっております。そのほか、東南アジア地域でいくつか交渉を進めている会社がございます。

弊社としては、これまで約2年間、地道に各国の会社とコンタクトを取り、頻繁にSkypeで電話会議を行ったり、お互いに訪問しあったりと関係を構築し、パートナーシップのスキームを交渉してきました。そういう意味では、現在もまだまだ途中経過という位置づけになると思います。

――海外でサービスを行う際には、サービスインまでにどの程度の期間が必要となってくるのでしょうか?

中元氏:ひとつの国でサービスインするときは、最低でも足掛け半年はかかりますね。まず最初に複数の会社と交渉を始めて、それぞれから条件が出てくるので、そちらが出揃った段階でパートナーを組む会社と基本的な契約を交わします。その後、細かな契約条件を交渉し始めて、最終的に契約書のサインまで行くには3ヶ月以上かかってきます。

それからゲームのローカライズ作業など、ローンチのための準備を行なっていくのですが、こちらも最低3ヶ月以上かかりますので、ひとつの国で現地のパートナーさんと展開をしようとすると、最低半年はかかってきますね。

――今回の「みんなで牧場物語」では、RunUpGames Distribution Ltd(以下、RunUp)と一緒に、複数の地域で同時にサービスインされていますね。

中元氏:RunUpさんは香港の会社で、アジア地域をテリトリーとして、香港、台湾、マカオをカバーしています。さらに、今回のサービスが中国語の繁体字と呼ばれる、中国大陸以外で使われる言語で展開することから、シンガポールやマレーシアについては、国内に繁体字を使うユーザーも多いという理由でカバーしようということになりました。それと同時に、Facebook上でも繁体字でのサービスを開始しました。

――すでに「みんなで牧場物語」のサービスを開始している地域について、反応はいかがでしょうか?

中元氏:反応は非常にいいようで、課金サービスはもう少し先に予定していたものの、前倒しして始めたという経緯もございます。

――今回サービスを行う地域の方々は、課金に対して、どのようなスタンスなのでしょうか?

中元氏:オンラインゲーム市場はアジアでは浸透しておりますので、そういう意味ではアイテム課金のオンラインゲームは日本のユーザーさんと同等に慣れ親しまれているのかなと思います。

最近のトレンドとして日本ではフィーチャーフォン向けのアプリを作っていた会社が、スマートフォン向けのアプリを開発し、グローバルに展開するという2つの軸がキーワードになっているようで、軒並み海外に拠点を作られているケースが多いです。

ただ、弊社の場合は、展開しているアプローチが違うと思っています。もともと国内でフィーチャーフォン向けのサービスを行なっておらず、ベースはPCブラウザ向けのオンラインゲームを開発していましたし、アジアにもともとPCオンラインゲームの市場がありましたので、そこに向けてライセンスを提供していくというかたちで進めていきました。

なので、今日現在も軸足はPCに置いていますし、ここ2年のアジア市場を見ていても、モバイルでマネタイズしていくのは厳しい市場だと思っています。やはり1ユーザーあたりの課金金額も違いますし、日本のように上手くはいかないのかなと。

どちらかといえば韓国産、中国産のタイトルが普及している市場なので、ONE-UPとしてはコアとなるオンラインゲーマーをターゲットにまずはPCブラウザゲームに傾倒していき、徐々に裾野が広がっていったことで、もう少しライトなユーザー層向けに「みんなで牧場物語」のサービスを開始することとなりました。既定路線の中でPCを軸に展開しているというところは、他社さんとは違うところなのかなと思います。

また、弊社も昨年の末にシンガポールに法人を作り、インドネシアにも拠点を置いています。こちらも順序としては、「これからアジアだ」というところで進出して拠点を作ったわけではなく、2年間ライセンスの契約や営業などの事業展開を行なって、現地にいろいろなパートナー会社とのコンタクトができている中で、現地に拠点があったほうが、もう少しきめ細かく現地のパブリッシャーさんをサポートできると思いました。

加えて、我々もライセンスのスキームから現地の会社さんと共同で運営していくことで、パブリッシングのノウハウを学んだり、一緒に現地の市場向けのゲームを作るという方向に進み始めているので、物理的に会社なり拠点を作ろうと思いました。

――現地の市場向けのゲームを作るという話がありましたが、新規のタイトルも予定しているのでしょうか?

中元氏:椎葉さんが独立して「Aiming」を作られた去年の5月、6月でONE-UPの体制が変わり、人も抜けてしまい、当時160人くらいいた社員が最小で20人ほどに減ってしまったのですが、残ったのは海外事業のメンバーが主だったので、「ブラウザ三国志」「ブラウザ三国志モバイル」「戦国IXA」「ブラウザ一騎当千」「みんなで牧場物語」といった主力の既存タイトルを残ったメンバーで維持・運営していくことに特化していました。

そういう意味で、昨年体制が変わったドタバタの中で目の前にあることをやっていくのに手いっぱいだったのですが、1年ほどかかってようやく徐々に人も増えてきて、今年の決算期(ONE-UPの決算期は3月)もいい数字で迎えられたので、今度はそこで蓄積された利益を新規に再投資していこうという流れになりました。

先行して海外に会社を作ったこともそうですし、年明けくらいから日本のチームで新規タイトルの企画に着手して、今現在、新タイトルをPC1本、モバイル1本作っています。そちらはこの夏にまず日本でリリースし、ほぼ同時並行でそちらを海外で展開するための準備を進めている状況です。

この2本以外にも、日本のチームで新しいタイトルを数本、立ち上げようとしているところですし、そちらを海外に持っていくためにどうカスタマイズしていくのかという話を海外のパートナーと話しています。また、ゼロベースで海外の会社と、IPを使っての共同開発を検討しているところです。

――将来的には、海外で開発・運営するタイトルを日本に持ってくるということも考えているのでしょうか?

中元氏:もちろん可能性としてはあるのですが、2年間やってきた中で、アジアは一括りにできる市場ではないと感じていて、その部分も大事なことだと思っています。

例えば、インドネシアとベトナムとタイは全く別の市場になっています。それは言語の違いもそうですし、それ以上に文化的・歴史的な背景も全然違いますし、当然宗教的な要素も入ってきますので、それぞれの国に一般化して最適化したコンテンツを企画して作るというのはほぼ無理ですし、意味のないことだと思います。

欧米諸国では、言語は違っているものの、キリスト教の文化的背景を共通に持っていて、神話上の人物がキャラクターとして登場するなど、わりと共通の認識を持っています。

それに対して、アジアでは、各国で別の認識を持っていて、わかりやすいところで言えば「三国志」は、知っているのがアジアの中でも中華系のバックグラウンドを持っている方ぐらいで、あまり共通の要素がないのが実態です。

なので、アジアは近くてやりやすいように見えるのですが、思っていたほどにはアジアは共通の市場でもなければ、日本人だから理解しやすいという市場ではないので、結構手間暇がかかる市場ではあります。

そういう意味でもグローバルにスマートフォンというのは、取っ掛かりとしてはいいかもしれませんが、英語圏でのスマートフォン向けのサービスは供給過剰な状況だと思うので、そこで一定のプレゼンスを出していくのは、勝率の低い商売を仕掛けていくことなのかなと思います。

――「ブラウザ三国志」や「みんなで牧場物語」のサービスをするにあたっては、国ごとにローカライズ以外の要素もプラスしているのでしょうか?

中元氏:単純に絵やキャラクターを変えるなどといったニーズがあるのかというと、あまりそういうものは求められてはいないようです。

そのかわり、インドネシアではネット上でのコミュニケーションの仕方など、インターネットそのものの使い方に照らし合わせてチャット機能を変更したり、タイでは「ブラウザ三国志」をiPadで遊んでいたりと、想像もつかない市場になっています。

加えて、アジアのユーザーは日本のユーザーよりも英語のリテラシーが高いところもあって、Facebookなどでいろんなゲームを遊びなれているというところもありますし、日本人が気にするようなディテールもこだわっていないと思います。

また、パートナーを選ぶときにはどれだけ各国の市場で今までオンラインゲームを運営してきたかという実績を聞きながら、納得ができるところにライセンスを提供するということをやってきています。

――アジア市場で展開することへの魅力はあるのでしょうか?

中元氏:アジアを最初からターゲットしてきたかといえばそうではなくて、弊社ではサンフランシスコに拠点を作ったり、英語版やフランス語版の「ブラウザ三国志」の提供を行なってきて鳴かず飛ばずだったりしますが、アジア圏でも上手くいく国と予想以上に上手くいかない国があります。

例えば、台湾に「ブラウザ三国志」を出していますが、結果は予想以上に厳しいものになっていますし、一方でタイでは、「三国志」はあまり知られてないかと思いきや、案外しぶとく2年くらい毎月実績を上げています。

現在弊社の社員の3分の1は外国籍の人間で、英語はもとより台湾や中国などのネイティブの人たちもいて、そういう人たちと一緒に契約を詰めてやってきていますが、この2年間は試行錯誤の繰り返しでやってきた感じです。

椎葉さんは以前韓国系のパブリッシャーにいらっしゃって、アジア圏でずっとお付き合いをしてきたゲーム会社があったので、そこへのコンタクトはスムーズにいきましたし、私自身もシンガポールで通算5年くらい居て、個人的な知り合いから政府の関係者までパイプがありましたし、インドやタイなどで仕事をしてきた経験もありました。

そういうわけで、アジアをメインターゲットとしていたというよりも、事業を拡大していく中で、土地勘があったからこそアジアに進出していきました。

そんな中、昨年後半からゲーム業界のアジア熱がすごくなって、現状ではバブルの頂点みたいな状況になっていますので、我々としては現在の市場の状況を見て、自分たちのプランを軌道修正しています。

具体的には、我々もシンガポールに人を採用して、チームを構えてパブリッシュしていくことを考えていたのですが、日本の会社を中心にいろんな会社がシンガポールに集中してきたために、人を雇うにも全ての値段が高くなっていて、最高値でつかまされるような市場になっているので、今はクールダウンしているところです。

――以前はシンガポールに勤務されていたということですが、シンガポールはどのような場所なのでしょうか?

中元氏:シンガポールは小さい都市国家で、海外から資本を引っ張ってきて国内に投資させて潤すというのが国自体のビジネスモデルとなっています。

国としてそういう政策をとっているので、一番大事なことは海外から来た人にいかに気持ちよくビジネスをやってもらえるか、いかに気持ちよくそこに住んでもらえるかというのが、国として提供する一番のミッションになっていると思います。

シンガポールは多民族国家でもあるので、あそこで生まれると、公用語である英語と、自分のオリジンの地域の言語とが使える、バイリンガルとして育ちます。そして、国内の優秀な人材は海外から資本を引っ張ってくるような仕事に当たらせたりもするので、例えば日本の担当になる人は当然日本語も話せます。

彼ら、彼女らのミッションは日系の会社にシンガポールに進出・投資してもらうことであり、シンガポール国内のマーケットは限られているため、シンガポールをハブにして東南アジアやインド、中国などに展開していくという話になります。

そういうかたちでいろんな国から大手の会社を呼び込んでいるのですが、その時その時の経済の状況に合わせて産業を育成するので、私が携わっていた2000年~2006年頃は“IT”がひとつのテーマになっていて、そのセクターにお金を使っていました。

一方で元々都市国家なので、知的産業を育成するという意味では金融が大きな中心になっているので、金融産業もありますし、あとはバイオ産業も盛んです。

そんな中、当然ながら今のグローバルの流れでいくと、“ソーシャル”に行こうというかたちになります。広くゲーム、コンテンツ、メディア、エンターテイメントというのがひとつのテーマになっており、いろんな企業がシンガポールに拠点を構えています。

その時その時に注目になっているトレンドな産業の、中心となる企業にいろんなインセンティブを与えて引っ張ってきて、そこで雇用を生み出して、現地の人間がそのまま仕事につけば労働市場でのマーケットバリューも上がるというサイクルで回している国なので、当然ながら日系のソーシャルゲーム会社に対してもウェルカムなんです。

そのテーマに沿ったイベントやカンファレンスも開催していて、2年前はそんなに盛り上がらなかったのが、今年はグリーさんやディー・エヌ・エーさんがスポンサーについて、7割、8割は日系企業が参加しているイベントになっているそうなので、その動きの素早さはすごいところだと思います。

なので、シンガポールに日本のSAPさんが進出しているのは、シンガポールという国の産業政策が上手くいっているひとつの表れなのかなと思います。私たちもシンガポールをひとつの拠点にすることを考えながらも、今はバブルで高騰していてリスクが高いため、現在はニュートラルな姿勢になっています。

――昨今業界を賑わせた“コンプガチャ”について、見解をお聞かせいただけますでしょうか。

中元氏:もともと業界に対する規制の動きはあって、各社さんでどうされるか考えていたと思うんです。弊社に関しては、昨年体制が変わってから、既存のタイトルに注力してきたので、今のところ規制の影響はほとんどないです。

また、ONE-UPは残ったメンバーでできることをやるという体制で、新規タイトルに手を回せなかったんです。去年ぐらいにコンプガチャのトレンドに乗って開発しなかったことは、運が良かったのかなと思います。

年が明けてから新規の企画に手をつけた時には、規制の話はすでにかなり耳にするようになっていたので、今現在進めている企画・開発は最初の段階からその部分は外したものになっています。

業界全体のことで言うと、私自身がゲーム業界に入ってから短いのであれこれ言う立場ではありませんが、こういうものって規制が公になって、収益に対する影響はないというコメントがあると思うのですが、私個人としては今後じわじわと効いてくるのかなと考えています。

今あるものをやめたことは表面に出てくると思うのですが、それよりも水面下で現在開発中だったのものがこの規制を受けて、作り直しや方向修正を余儀なくされて、そこに追加の開発コストがかかったり、リリースのタイミングがずれるというところの影響が、下半期ぐらいにじわじわと広がってくるような気がします。

――全く影響がないということはあり得ないと私も思います。

中元氏:そういうことがあって、より海外に目を向けているところもあるのかもしれないですね。

――最後に、今後のONE-UPに期待してほしい点があればお聞かせください。

中元氏:今のONE-UPって、業界のカリスマ的存在だった椎葉さんが抜けてしまったあとというイメージがあると思いますが、実は、椎葉さんと我々は今も普通に仲良くしていて、現場レベルではよく呑みにいったりしていますが、私なんかも元々ゲーム業界の人間ではないので、今も椎葉さんからいろいろと教えてもらっています。

ONE-UPは椎葉さんと「ブラウザ三国志」の会社というイメージでやってきている部分がどうしてもあるので、それが今年に入って新しいメンバーで、投資をしながら新規のものを作ろうとしているところです。新しいメンバーでどのようなものを世の中にリリースさせていけるのか、私自身楽しみにしています。

――ありがとうございました。

(C)2010 ONE-UP Inc. All Rights Reserved.

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