「ブループロトコル」を“劇場アニメクオリティ”たらしめる手法とは?ゲーム制作におけるアニメ表現技法を紹介【CEDEC2020】

「ブループロトコル」を“劇場アニメクオリティ”たらしめる手法とは?ゲーム制作におけるアニメ表現技法を紹介【CEDEC2020】

2020年09月04日 15:55

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オンライン上で9月2日~4日にわたって開催の「CEDEC2020」。ここでは、9月4日に行われたセッション「BLUE PROTOCOLにおけるアニメ表現技法について」の内容をお届けする。

バンダイナムコオンラインとバンダイナムコスタジオによる共同プロジェクトチーム「PROJECT SKY BLUE」の中核を成すコンテンツとして開発中の、PC向けオンラインアクションRPGタイトル「ブループロトコル」。開発はUnreal Engine 4で行われ、劇場アニメに入り込んだかのような圧倒的グラフィック表現と、オンラインゲームの特性を活かしたマルチプレイアクションが特徴のタイトルとなる。

本セッションでは、劇場アニメクオリティのビジュアル表現を目指して開発を進められてきた本作が、どのような制作手法でキャラクター・背景・VFXを構築してきたかが、バンダイナムコスタジオの千家英嗣氏、奥村大悟氏、角広昭氏、長尾弘子氏、平山英輔氏、杉山和也氏より解説された。

最初に本プロジェクトの概要が説明された。「ブループロトコル」のグラフィックコンセプトは、「壮大で精緻なセルルックのゲームにする」というもの。ただ、セルルックのゲームのためのアセットを作ってくださいと言われて、制作されるアセットのイメージはディティールを削り目で大雑把なものがイメージされがちだという。しかし、「ブループロトコル」では、目指す劇場アニメクオリティのビジュアル表現を実現するために様々な工夫が凝らされている。

ただし、それを表現するスマートなやり方というものは残念ながら無く、本作では「アニメっぽい」と感じる瞬間や要素を1つ1つ積み重ねていくことで実現している。

まずはキャラクターについて。以下の画像がキャラクター表現の最終ルックになる。この見た目を実現するために実装されている要素が順に説明された。

アニメ表現において重要になってくる輪郭線は、ポストプロセス(事後処理)で描画されている。開発当初は輪郭モデルのみで全て表現されていたが、モデルデータのサイズ削減と作業コスト低下のため、ポストプロセスの輪郭線描画を採用したそうだ。カメラからの深度情報を使ってモデルのアウトラインに対して輪郭線を描画、それでは描かれないモデル内部については頂点フェイスカラーの明度差を使ってラインを描画している。明度が大きくなれば太く、小さければ細く描画されているのが確認できる。

関節部などモデルが重なる部分では、ワールドノーマルのコントラスト差を使用して輪郭を描画している。手や指など一続きな箇所は頂点フェイスカラーでは塗分けができないため、こちらの手法が効果的なのだとか。

輪郭モデルでは、一般的な裏面モデルを膨らませる手法をとっている。特に尖った先端は方向がズレると見た目がおかしくなるのでツールを使って修正。輪郭モデルは顎・口・耳など一続きでオーバーハングしている部分が主で、全体では使用せずピンポイントでの使用になっているそうだ。髪の毛も複雑な凹凸が多いので輪郭モデルを使って毛束が描画されている。

シェーディングは、グラデーションを使わないくっきりとした境界のスタイルで表現されている。ただし、背景への馴染みと設置感アップのため、地面から胸元へかけてシェーダーでグラデーションが軽くかけられている。

明暗の割合は、5対5では逆光時に全て影色になってしまうシチュエーションがあったため、見た目が平坦化してしまったそうだ。そのため7対3で明るめに表現されている。

影色は自動作成されているのだが、ただ明度を下げるだけでは濁って見えてしまうので、色相をずらして明度は下げつつ、彩度はあまり下げないように調整されている。また、常に影になる部分はテクスチャを使って表現をしており、逆光時でもディテールが残るよう処理されている。顎の下や衣装の閉塞部分は影色になりやすいように処理されている他、帽子やヘルメットなどの落ち影は、ポストプロセス(事後処理)で表現。さらに真上に光源がある場合、顔に不要な影が発生するので、肌のマテリアルにはライトの角度が50%軽減して当たるようになっているとのこと。

続いては髪の毛のスペキュラ(鏡面反射光)表現について。アニメでは様々な表現があり作品の個性化に大きく影響する。「ブループロトコル」では、以下の画像を再現することを目標に進められた。具体的にはカメラから近いところはスペキュラが小さくなる。

問題点として、髪の毛を均等に配置したUV展開だと一つのマスクに割り当てられる面積が小さくなり境界部分にピクセル感がでてしまったというものがあったそうだ。これを解決するため、割当面積を増やす対応としてスペキュラ部分を別UV化し再配置、テクスチャにベイクを実施している。また、スペキュラの拡縮の判定をどう行うかについては、テクスチャインポート時に各ハイライトの重心を判定して、そこからの距離によってUVを移動させている。各情報はテクスチャの各チャンネルに入れて使用されている。

実装した画像が以下だ。スペキュラの境界部のノイズが無くスッキリしておりカメラを引いてもディテールが残っている。

キャラクリエーションでは、アニメの設定画のようなレイアウトが表現されている。本作のキャラクリ画面では、画面内に複数のモデルを表示するためカメラ毎に別座標で撮影が行われているそうだ。撮影したデータは2Dテクスチャとして使用されている。衣装の来合わせは、コスト削減のため1つのアセットで済まされており、干渉する部分を非表示にして接続部分に絞り骨を入れてモデルが干渉しないようになっている。

本作はオンラインゲームということで、画面内に多数のキャラクターが描写される都合上、表情は骨で対応されている。感情別に表情を25個ほど作成し、目と口は組み合わせて使用することができるそうだ。

続いて、本作のエフェクト表現が目指してきたものに関する解説が行われた。

本作のエフェクトは、アニメ的な表現を目指すために透過を行わない不透明素材が多く使用されている。以下の画像が半透明と不透明の違い。不透明素材を使うことでセルルックとの親和性が高まっていることが確認できる。

ただし、不透明の素材を使用することで透過が行われないため画面の視認性が低下してしまう、という問題も同時に発生した。本作はオンラインゲームなので、複数のキャラクターやエネミーが戦闘を行うシチュエーションが多く、エフェクトが重なってゲームプレイを阻害してしまう。

これを解決するため、カメラが特定の距離になると徐々にエフェクトの消込を行う処理が行われている。これによって複数のエフェクトが重なった場合の視認性低下が防がれているのだ。

続いては、リアルタイムの変化と多方向からの見た目に対応したエフェクトの作り方について。一般的なアニメエフェクトでは連番を用いることが多いそうだが、リアルタイムで様々な角度から見られるタイトルでは、パターンのループ感やカメラ位置で絵の向きが変わらないため単調な印象になってしまう。

本作では、この問題に対応するために、テクスチャに歪みを加えるフローマップとテクスチャの明暗をもとに消し込みをおこなうディゾルブを組み合わせ、ランダムな感じとアニメ的な消し感が表現されている。また、フレネル(モデルがどれだけカメラを向いているか)を利用して色を塗り分けることで、異なる角度から見ても異なるエフェクトに見えるよう作られている。

また、本作では、モデルのUVチャンネルに頂点の移動情報を格納し2つのモーフターゲットをモデルに仕込む「スタティックメッシュモーフターゲット」という技術が使用されており、こちらの活用例も紹介された。トポロジの変化しない3種のモデルを3つ用意し、スタティックメッシュモーフターゲットとして書き出す。すると変形可能なモデルができ、これをランダムに発生させ、雷のテクスチャを適用することで電撃のエフェクトができる。

他の用法として斬撃のエフェクトも紹介された。こちらのエフェクトは板で作成すると角度によって見えなくなってしまう。そのためベーグル状のモデルを用意し、斬撃の挙動に合わせて先端をつぶれるように設定すると視線移動に対応した斬撃エフェクトが作成できるそうだ。

ポスト(後処理)エフェクトでは、アニメなどでセル画のべた塗り感を緩和するために絵の上からグラデーションをかける「パラ」の再現を目指したという。以下の画像はわかりやすいようにポストエフェクトを10倍に設定したもの。汎用性を考えパラの挙動は太陽を基準としてサンフレアと連動している。

ただし、洞窟内や建物内など、画面に光源が表示されていない状態でも光源由来のエフェクトを表示していることになるため、光源の有無以外にも表現を切り替える判定が必要になる。そこで、カメラが日陰に入っているかを判定する仕組みを導入し、日向と日陰でエフェクトを切り替えている。

ポストエフェクトは、時間帯別に4種類用意し、時間帯によってオーバーラップして使用されているそうだ。

最後に、アニメテイストを意識した背景の制作に関する説明が行われた。

まずは背景アセットについて。背景アセットは物理ベースのマテリアルが使用されているが、「ブループロトコル」はフォトリアルではなく、アニメ背景アートのようなテイストを目標としている。そのため細かい情報量を敢えて減らす工夫を行ったそうだ。ただし、形状はリアルなものと同じようにしっかりと作り込まれている。

本作は日本のアニメ背景アートのようなテイストを目標としているが、これを手書きで仕上げようとするとコストが増えることと作業者のスキルによるクオリティのばらつきといった問題が発生する。そこでテクスチャ作成のメインツールをPhotoshopからSubstance Painterへ変更。アニメ背景アートのように見える要素を抽出してSubstanceマテリアル化することで、手早く、クオリティのばらつきが少ないテクスチャを作成することに成功した。

続いて、草原のマテリアルをアニメ表現に近づけるための手法が紹介された。様々なアニメ作品を参考にした結果、「カメラからの距離により草地のテクスチャーカラー情報を減らす」「草原全体に色ムラを付ける」「ハイライトを追加して風によりきらめく草を表現する」という3点に着目したという。以下の画像が草原マテリアルの適用変化だ。

先ほどサンフレアと連動したポスト処理が紹介されたが、本作ではアニメ表現を目指して実装されたポスト処理が他にもあるという。その1つがSNNフィルタ。近接するピクセルの情報を広い、平均値を入れることで手書きのアートっぽくディティールをつぶすことができるフィルタだ。以下が適用前後の比較画像だ。SNNフィルタで岩肌の情報がほどよくつぶれ手書き風味になっている。

影色は、カスタム機能で色を付けられるようになっており、カメラから近い場所と遠い場所で指定を変えることが可能だ。以下の画像が影色有りと無しの比較画像。影色有りでは、手前の影は青みがかっており、遠景の影は緑がかった色相になっている。

以上が本セッションで紹介された内容だ。「ブループロトコル」最大の特徴である圧倒的なグラフィックは、1つ1つの小さな工夫の積み重ねによって生まれたものだった。クローズドβテストを終え、現在開発中の「ブループロトコル」。本作がプレイできる次なるタイミングでは、このセッションで触れられていたことを思い出しながらプレイすると、さらなる魅力に気付けるかもしれない。

セッション冒頭では本作の初期コンセプトも明らかに。企画段階ではSF作品だったこともあり、甲冑と宇宙服を組み合わせたアートが元になったそうだ。
(C)BANDAI NAMCO Online Inc. (C)BANDAI NAMCO Studios Inc.

メーカー発表情報を基に掲載しています。掲載画像には、開発中のものが含まれている場合があります。

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