海外展開を進めるONE-UP、その狙いとは―マーケティングマネージャー島嵜氏に今後の展望を聞く

2011年12月に100%子会社をシンガポールに設立し、2012年に入って「みんなで牧場物語」初の海外サービスを発表した、オンラインゲームの企画・開発・プロデュースを行うONE-UP。積極的に海外進出を行っている同社は、今後どんな展開をしていくのか、事業開発グループ マーケティングマネージャーの島嵜 直樹氏にお話を伺った。

――まずONE-UPでは現在どのような取り組みを行っているのかお聞かせください。

島嵜直樹氏
島嵜直樹氏

島嵜氏:日本ではマーベラスAQL様との共同プロジェクトである「ブラウザ三国志」をはじめ、「ブラウザ一騎当千」「みんなで牧場物語」の開発に携わっています。スクウェア・エニックス様の「戦国IXA」の開発も担当させていただいた実績もございます。

海外では「ブラウザ三国志」を韓国やタイ、シンガポールなど現在6ヶ国でサービス展開しております。次のタイトルとしては、先日発表させていただきましたが、香港のRun Up Games Distribution Ltd(以下、Run Up)様と提携して「みんなで牧場物語」を台湾、シンガポール、マレーシア、マカオなどでサービスを行っていく予定です。

さらにインドネシアでも「ブラウザ三国志」のサービス展開を進めています。実はインドネシアに事業所があり、スタッフを先行して4名ほど派遣しています。開発も進めている最中で、現在は契約に関する最終調整中というところです。

「みんなで牧場物語」に関しては、Run Up様に続いてタイの会社とも提携が進んでおりまして、こちらも最終調整中といったところです。タイではすでに「ブラウザ三国志」のサービスをしていて多くのユーザー様にプレイしていただいているので、「みんなで牧場物語」の参戦により、タイでの展開も広げていけると思っています。

――現地での取り組みや今後予定していることがあれば教えてください。

島嵜氏:事業所のあるインドネシアでは、少し変わった取り組みも行っています。これまでは、現地のパブリッシャーにライセンスアウトし、プロモーションや運営はお任せするスタンスだったのですが、今後は我々ONE-UPがパブリッシャーとして動いていくつもりです。昨年12月にはシンガポールに100%子会社のONE-UP ASIA HOLDINGS PTEを設立しましたし、これからは完全に現地向けの内容を作っていこうと考えています。

その一歩として、インドネシアでは「みんなで牧場物語」をPRODIGY INFINITECH様との共同パブリッシングという形を取らせていただきました。現地には先行してスタッフも派遣していますし、少しずつノウハウを得て、まずは今回の共同パブリッシングで実績を作り、その先につなげていきたいですね。

単純に日本のものを持っていけばヒットするというわけではありませんので、今後は現地の開発会社とも連携が取れるよう、直接の提携も検討しています。日本とは市場が違いますし、当然文化や宗教も異なります。そのため、インドネシアであればインドネシアに特化した、その国の市場にあったシステムを織り込み、地産地消のビジネスを取り入れていこうと思っています。

そういった取り組みの可能性を模索すべく、現地の開発会社と活動を行っています。それがブラウザゲームになるのか、Facebookアプリになるのかといったことも、地域に合わせていくつもりです。例えば東南アジア、なかでもインドネシアではスマートフォンの「Blackberry(ブラックベリー)」がすごく流行っていますので、それに特化したアプリも選択肢の一つとしてアリではないか、とは考えています。

――確かに日本ではブラックベリーユーザーをあまり見かけないので、現地の市場に合わせるのは重要ですね。

島嵜氏:実際にブラックベリー向けのアプリを作るか、というのは検討中のため明確には申し上げられませんが、現地のトレンドであったり、ニーズに特化したビジネスを考えてやっていきたいです。

日本市場向けにも、新規ブラウザゲームの開発を進めているところです。手前味噌ではありますが、ブラウザゲームに関してONE-UPがパイオニア的な存在であると思っていますし、ノウハウも持っているつもりです。ですので、しっかりと市場を見極め、新しいところに向かってやっていくという、いわゆるベンチャー企業のような動きは忘れずにいこうという考えで動いています。

現在のONE-UPは開発会社というイメージが強いので、今後は日本に限らず海外全体にもONE-UPという会社をどんどん表に出していけるよう、積極的に共同パブリッシングや自社パブリッシングを進めていきたいですね。

――では海外でも現地の会社に任せず、今後はプロモーションなども自社で行うのでしょうか?

島嵜氏:将来的にはそうしていきたいですね。今まで積み上げたノウハウ、ネットワークをさらに現地で強化している最中です。

――では今回の子会社設立やRun Upとの業務提携が、その足がかりになるわけですね。

島嵜氏:やはり現地に会社があるかないかでは、現地のメディアの反応が違ってきますし、何か発生したときに対応するスピード感も変わってきます。

――トレンドも変わってきますよね。

島嵜氏:特に高度経済成長の地域は本当にあっという間にトレンドが変わりますので、それも踏まえてスピード感は大事にしています。

――現地の内容に合わせていくということですが、例えば「みんなで牧場物語」では育てられる作物を日本と海外で変更したりするのでしょうか?

島嵜氏:現地の需要があると判断すれば、積極的に取り入れる方向で考えています。現地でなじみ深い作物や家畜も取り入れる方向で現地のパブリッシャーと検討を進めていきます。

――海外に展開していく中で、日本との市場の違い、人気のあるジャンルがあれば教えてください。

島嵜氏:インドネシアにフォーカスさせて話をさせていただくと、二頭身ぐらいで表現された、すごく可愛らしいキャラクターがヒットしていますね。「みんなで牧場物語」はそれに近いキャラクターですので、ニーズにも合致していると考えています。

――プレイスタイルにも違いはあるのでしょうか?

島嵜氏:プレイスタイルの違いもありますが、まだ市場的にゲームがそこまで浸透していないという面もあります。オンラインゲームやPCゲームが今まさに発展途上という感じですので、市街地から少し離れた場所にある「Warung Net(ワルネット)」という、インターネットカフェのような場所に現地の子供たちが集まって遊んでいたりします。

ただゲームがそれほど浸透していないのに比べ、携帯電話の台数は非常に多いです。先ほど申し上げたブラックベリーが特に人気なのですが、それで何をしているかというと、ゲームではなく、「Facebookメッセンジャー」や「ブラックベリーメッセンジャー」で友達と会話をするということが圧倒的に多いんですよ。

これはコミュニケーションを大事にする文化からくるものと分析しています。メッセンジャー以外でも、インドネシアで流行っているタイトル、ユーザが実際にプレイする様子を観察すると、友人とコミュニケーションしながら楽しむ割合が圧倒的に多いんですね。ひとりで黙々と進めるというより、友人とワイワイ楽しむという感覚でしょうか。

日本ではソーシャルゲームをプレイする人がいても、iPhoneなどのスマートフォンでFacebookメッセンジャーはあまりやらないじゃないですか。なので、ブラックベリーでメッセンジャーばかり使っているところにゲームというものを送り出せば、受け入れてもらえるのではないかと考えています。

――ビジネス的には課金についても重要だと思いますが、決済方法は日本とあまり変わらないのでしょうか?

島嵜氏:おおむね似たような感じですが、現地で目立つのは「ワルネット」でのプリペイド式のポイント販売が大きなシェアを占めているところですね。そういった場所でゲーム内で使うプリペイドのバウチャーカードを買うというのが主流になっています。クレジットカードはまだあまり普及していませんので、プリペイド式の類がメインですね。

――PCの普及やスペックはどのようなものが多いのでしょうか?

島嵜氏:まだ日本のように一人一台というレベルではありませんね。インターネットの普及率は急速に上がっていますが、いまだに携帯からfacebookをブラウザする程度のアクセスが多いです。オンラインゲームについても未だにワルネットからのアクセスが6割程度をしめている、という状況です。

――現在展開しているのはブラウザゲームですが、現地のインフラやPC市場が成長してきたらクライアントDL型を出していくことも考えているんでしょうか?

島嵜氏:可能性はあると思っています。ただ、正直なところトレンド次第ですね。日本ではクライアント型が少し厳しくなってきていますし、現地でも同じことが起こりうると考えています。現在はタブレットPCが進化してきていますし、市場も変わってきていますので、アプリのような手軽な形で展開していくのがメインになるかもしれません。

――ではブラックベリーやモバイル向けアプリ、ソーシャルゲームの展開も?

島嵜氏:まさに今そういったことを考えている最中でして、香港、台湾、シンガポール、マレーシア、マカオで展開する「みんなで牧場物語」に関しては、基本的にFacebookにも載せる予定で進めています。それがうまくいけば、タイやインドネシアでも同じようにFacebookでの展開も進めていきたいですね。

海外ではそういった対応をしていくのがベストだと思っていますので、PCにこだわることはせず、将来的な伸びが期待できるプラットフォームを見極めたうえで柔軟に対応するつもりです。

――日本で展開予定の新規タイトルは、既存IPを利用したものとオリジナルタイトル、どちらになるのでしょうか?

島嵜氏:IPを使おうとしているものと、全くオリジナルのものを含め、複数のタイトルが動いている状況です。

――今後は日本と海外どちらがメインになるのでしょうか?

島嵜氏:どちらがメインというのは難しいですね。海外展開を積極的に進めてはいますが、やはり国内市場も大事です。海外については、積極的に、スピーディーに展開しており、実績も出つつあるのでこれから楽しみではありますが。日本にはマーベラスAQL様をはじめ、ビジネスパートナーがおりますので、各社とうまく取り組みを行っていきたいというスタンスです。

――海外展開の先駆けとして「ブラウザ三国志」「みんなで牧場物語」を選んだ理由はなんでしょうか?

島嵜氏:ライセンス権利の問題もありますが、「ブラウザ三国志」は日本で累計240万人のユーザー様がいらっしゃいますし、「三国志」そのものがアジアでもメジャーなので、売り込みやすいというのがあります。中国に限らず、台湾や韓国、タイ、インドネシア、シンガポールでも人気ですし、日本でも成功したタイトルですので、まずはこのタイトルで海外の基盤を作ろうというのが理由にありました。

――「ブラウザ三国志」はすでに何カ国かでサービスしていますが、反応はいかがですか。

島嵜氏:やっぱり海外では、受けるところと受けないところの差がはっきりしています。「三国志」に対するニーズが高い国では受け入れてもらいやすいですが、正直なところ、フランスでは若干苦戦しています。あちらでは西洋史などのほうが受け入れられるので、ニーズの違いがあると感じています。

それからゲームのプレイスタイルにも違いがありますね。例えば東アジア地域では、育成だったり、建築だったり、徐々に成長・発展する楽しみを見出していただけるのですが、フランスでは「建物はすぐに建ってほしい」と考えるユーザー様がいらっしゃるようです。もちろんすべての方がそうではなく、一部のユーザー様の意見ではあるのですが、サービスする地域に合わせてゲーム性を変えていくといった検討の余地に気づかせてもらいました。

――海外でのプロモーションや広報活動で日本と異なる点はありますか?

島嵜氏:基本的には日本と同じですが、海外では規模の小さいものも大きいものも含め、とにかくイベントをやりたがる傾向があります。ショッピングモールでイベントをやることもありますし、サンプリングもそうですし、ちょっとしたゲーム大会に企業が協賛するのも珍しくありません。日本ではオンラインゲーム業界がゲーム大会に協賛するというのは少ないので、その点は日本と違うかなと感じたところですね。

――オフラインイベントが流行りそうですね。

島嵜氏:そうですね、かなり積極的に実施しているみたいです。現状ONE-UPが展開しているのはシミュレーションゲームですので、オフラインイベントが向いているかと言われると難しいのですが(笑)、これも色々とやり方が工夫できると考えています。

――海外にシフトしていくとのことですが、日本では新規タイトルも展開されますよね。今後は先に海外でサービスしたり、あるいは海外だけでサービスをするタイトルも出てくるのでしょうか?

島嵜氏:海外で現地向けとして作ったものが、内容を変えて日本でも通用すると思うものであれば逆輸入も考えていますし、日本だけでなく、例えば中国で展開したほうがいいと思ったタイトルであれば、インドネシア現地で出したものを中国向けにアレンジして展開するといったことも考えています。

もちろん日本で受けそうであればすぐに日本にも持ってきますし、変にとらわれるようなことはせず、ゲーム内容や各国の市場などを鑑みて、フレキシブルに対応していこうと思っています。

インタビューは以上となる。いち早く海外展開を行っているONE-UPだが、日本でも新規タイトルが控えている状態だという。プラットフォームにこだわらず、国や市場にマッチするコンテンツを投入していくスタンスの同社が、今後どういった動きを見せるのか注目したい。

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