マスター・オブ・エピックのレビュー・評価仮想世界としてのMMORPGにおけるひとつの完成形

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MMORPGの基本設計

MMORPGは黎明期からプレイヤーに単一の目標を突きつけてきました。
人類の遺伝子に刻まれたプリミティブな衝動。
つまりは成長・金銭効率競争という限られたリソースの奪い合いです。

ゲーム内通貨、レアアイテム、強力な武装、キャラのレベルやステータス。
更には友人という名の"人脈"やゲーム内恋人までがその対象となります。

そしてそれは、仮想世界としてのMMORPGを
現実の延長に束縛する枷というべきものでした。

どれだけ他人を効率厨と蔑んでまったり気楽に過ごそうと考えたとしても、
システム側で既に効率を求める構造を世界に与えてしまっているからです。

自分がだらだらと過ごしているあいだに他の人々はどんどん先へ進んで行く。
新しい世界を眺め、新しい敵と戦い、より強くより賢く、より富を集積して。
そして強さや富を得るための機会や資源が限られているというのなら、
システムはプレイヤーに焦燥という不快感を与えてしまうのです。

枷の構造の特性とは社会的成功というリアルではなかなか為し得ない充足感を、
時間を注ぎ込んでプレイするだけである程度簡単に得られることなのです。

スキル制による絶妙なゲームバランスと特異な経済構造

しかしこのMaster of Epicというタイトルでは、
その枷をある程度取り外すことに成功しています。
まず、スキル制によるレベリングからの脱却が最も大きいでしょう。
極端に強力な装備というものもないので装備への依存度も低くなっています。
そして特筆すべきなのが、仮想経済の構築がある程度成功していることです。

初心者向けの金策として確立されているのが刺身ビジネスです。
PC生産品の刺身をNPCに売却することで利益が得られるのですが、
この刺身は幾人ものPC職人の手を経て流通生産され通貨に変換されます。

この刺身というアイテムは『白身魚の切り身』または『赤身魚の切り身』
と『醤油』をPC料理人が『調理』して生産される食品アイテムなのですが、
その工程はとてつもなく複雑です。
まず切り身はPC釣り人が釣った魚をさばいて入手します。
醤油はPC醸造者が大豆、小麦、塩を合成して作成します。
大豆と小麦はPC収穫者がでフィールドの畑で直接採取します。
塩はモンスターがドロップする岩塩や海水をPC料理人が調理して作られます。

このどの工程に参入しても利益が得られるため、産業として成立しているのです。

醤油はほぼ常時プレイヤーが露店販売していますし、
醤油の原料である小麦、大豆、塩も買取露店が立っています。
魚の切り身を買い取る露店まで存在しています。
他にも、主に戦闘で使われる、スタミナ・HP回復速度向上飲料の原料として
砂糖や果物が高需要で買取されているという光景も特段珍しいことではありません。
そしてこれらの価格が非常に安定していることもMoEならではといえます。

絶妙なシステムデザインがリソースの奪い合いを一歩前進させ、
プレイヤー同士の無意識での相互扶助が成り立っているといえます。
これはウルティマオンラインの黎明期にのみ見られたごく珍しい現象で、
システムバランスの改悪や経済の崩壊によって完全に消滅しています。

総評

黎明期から宿命付けられていたシステムの枷が取り外されたことで、
MoEが得たものは仮想世界のひとつの完成形という善き結果でした。
利害関係から発生する怒りや悲しみ、強い憎しみや熱い闘争心は消え、
焦燥感に追われながらの争いではない、ゆったりとした生活を手に入れたのです。
その代償として人間関係は希薄になり、ぼんやりとした世界が残されました。
どことなく掴みどころのない、子供の頃の記憶や断片的な夢のような仮想世界。

それはアニメ版Master of Epicでこう形容されています。

「わたしね、この世界に来たとき、ここは小さい頃
よく遊んだ公園みたいだなって思ったのです」

評価

総合評価 3.33
システム 4.00
グラフィック 2.00
サウンド 3.00
イベント 3.00
料金 4.00
運営管理 4.00

投稿者情報

投稿者 eldorado(4)
プレイ期間 1ヶ月未満
状態 活動
投稿日 2011年8月22日
更新日 2011年8月22日

マスター・オブ・エピック公式サイト

本レビューは2011年8月22日に投稿、2011年8月22日に更新され、現状と異なる場合があります。また、ユーザーの投稿をそのまま表示しているため誤った情報が掲載されている場合があります。ご自身の責任においてご利用下さい。

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