「FFXIV」クリスタルブレイブのIF話や「NieR」レイドで吹っ飛んでくるビルの話題も!「漆黒のヴィランズ」までの物語を吉田直樹氏にインタビュー

5月25日に公開されたパッチ5.55「黎明の死闘 Part2」にて、「漆黒のヴィランズ」の物語が完結を迎えた「ファイナルファンタジーXIV」。今回、パッチ5.5シリーズの振り返りや、パッチ5.Xシリーズの総括についてプロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏にインタビューを行った。

4月13日、5月25日に公開された「FFXIV」のパッチ5.5「黎明の死闘」。ここでは、「漆黒のヴィランズ」最後となるメインストーリーや、「NieR」シリーズとのクロスオーバーコンテンツ「YoRHa: Dark Apocalypse」、クロニクルクエスト「ウェルリト戦役」など、これまで公開されてきた様々なシリーズが完結を迎えた。

これまでGamerでは恒例としてパッチ公開前に本作のプロデューサー兼ディレクターを務める吉田直樹氏にお話を伺ってきたが、今回は趣向を変えパッチ公開後の振り返りとしてインタビューを実施した。パッチ公開後だからこそ聞ける気になるアレコレや「漆黒のヴィランズ」の総括など、本稿が「暁月のフィナーレ」を前に改めて物語を振り返る機会になれば幸いだ。

「FFXIV」プロデューサー兼ディレクター 吉田直樹氏。

クリスタルブレイブのたられば話など、メインストーリーを深堀り

――パッチ5.5では、これまでの「FFXIV」で大きな柱となっていた蛮神問題にも対抗策が講じられ、物語が大きく動きました。長年の問題に対する大きな一歩でしたが、ここを描くにあたり気を付けたことを教えてください。

吉田氏:これらの蛮族/蛮神問題への対応について、最も気を付けたのは、人と人が蛮族と呼ぶ者たちの間にある「和解の経緯」です。現実の歴史を見れば、国家間の紛争や、民族の対立というものは、その始まりが古ければ古いほど、そして、それぞれの教育が進めば進むほど、解決が難しいことがわかります。エオルゼアにおける民族問題もこれと同じく、何か一つのきっかけだけで、それが簡単に解決してはいけない、と考えました。

もちろん、ゲームというエンタメであるため、この和解の過程に使える尺には限りがあり、ここを長きに渡って描きすぎると、理解はできてもカタルシスが足りなくなってしまいます。コボルド族の現族長は「タイタンのテンパードとして、コボルドたちを生贄にしてしまった」という「負目」があり、まさにそこを突いた形の和平交渉で、メルウィブが提案を行うとしています。つまり、これはまだきっかけにすぎず、融和というのは、ここから何世代にも渡って、信念の綱渡りを続けた先にしかない、と考えています。

「蒼天のイシュガルド」でも千年に渡る竜と人の戦乱を描き、イシュガルド復興などを通じ、今もなおリリースから6年に渡って貴族と平民の融和、竜と人との融和を描いているのも、やはり同じ理由からです。

――パッチ5.55では、暁のメンバーと各国の首脳陣、そしてついに蛮族らが一堂に会する様子が描かれました。これまで「FFXIV」をプレイしてきた人にとっても本当に感慨深いシーンでしたが、蛮神問題の印象が強い3国ではなくアラミゴであの会議が行われたのには、どういった経緯があったのでしょうか?

吉田氏:アラミゴはまだ「解放」されたばかりで、国という体を成すには時間が短く、だからこそ国家間の思惑や、国内の妙な反対派の影響を受けない地として選ばれています。この辺りも長くなるためにある程度割愛していますが、そういったニュアンスがあって選ばれています。

――アルフィノにとって苦い記憶となっているクリスタルブレイブについても言及されましたが、当時と比べ彼はとても成長しました。もしクリスタルブレイブを設立した頃のアルフィノが今の彼と同じ考えを持っていたら、どのような物語になっていたと思われますか?

吉田氏:うーん、「たられば」話なのでお答えするのは難しいですが、もし理想だけでなく、現実を知り、世界や社会から学び、失敗も経て成長したアルフィノならば、あの時点でクリスタルブレイブなど設立していないと思います。ですので、クリスタルブレイブに関する物語は描かれなかったと思いますが、テレジ・アデレジの陰謀と、それを逆手に取ったロロリトの砂蠍衆内の膿を出し切る粛清は、きっと止まらなかったでしょう。なぜなら、ナナモ自身も考えが幼く、理想に傾倒しがちだったため、ロロリトはナナモに現実を見せるためにも、アレを実行したのではないか、と。となれば、やはりアルフィノはあそこで、何らかこの計画に巻き込まれるのは避けられなかった気がします。アルフィノはまだまだ成長途中で、ロロリトとやり合うには、失敗の数が足りないですからね……。

――パッチ5.5からパッチ5.55にかけては、アレンヴァルドとフォルドラの行動も大きな見どころでした。二人はルナイフリートと対峙しますが、これは紅蓮秘話のセルフオマージュでしょうか?

吉田氏:さて、そこまで厳密に回答するのは、ちょっと野暮かな、と思います(笑)。色々な想像を巡らせつつ、改めて秘話シリーズ」を再読していただくのも良い機会かもしれません。現在開発中の「暁月のフィナーレ」は、10年以上に渡って続いてきた、「ハイデリン・ゾディアーク編」の完結に当たります。もちろん、FFXIV自体は続きますし、新たなストーリーが展開されますが、各拡張の秘話を振り返ると、一層面白く感じられる要素が幾つかあるかもしれません……。

――アレンヴァルドが生きていてくれて嬉しい反面、もう一生歩けないと思うと胸に込み上げてくるものがあります。またこのシーンでは、すでに多くの想いを託されてきた光の戦士と、今まさに友に想いを託されるアルフィノの対比も描かれました。いちプレイヤーとしての吉田さんの感想をお聞かせください。

吉田氏:シナリオに関しては、どうしても自分の手で色々なキャラクターの行く末を預かっているので、感想というのは難しいですね(苦笑)。ただ、僕は「親友」や「幼馴染」という存在は、思っている以上に大切だと感じていて、僕にも数は少ないですがそう呼べる人がいます。きっと、アルフィノにとってアレンヴァルドは、故郷であるオールド・シャーレアンを離れてからできた、数少なくかつ、エオルゼアで出会った初の親友なのだと思います。もちろん、「想いを託された」という面はあるにせよ、アレンヴァルドだって、人生がこれで終わったわけではないのです。それぞれにできることをやり遂げ、また彼らはいつもと変わらない親友としてのお互いを認識するはずです。何年たっても、離れ離れになっていても、変わらないのが親友であり、幼馴染なのかな、と。

――アレンヴァルドはフロンデール薬学院を抜け出して来ていましたが、フォルドラが手伝ったのでしょうか? フォルドラはアラミゴに帰還させられていると思っていたのですが、薬学院へ駆けつけるほど自由が許されるようになっていたということでしょうか。アレンヴァルドを励ますなど、彼女も少しずつ変わり始めていると感じましたが、そのあたりが影響しているのでしょうか?

吉田氏:その辺りの流れは、ある程度ご想像にお任せしています。フォルドラについては、建前上そこまでの自由を許されているわけではありません。ただ、今回の任務に拒否権が用意されていたように、ラウバーンやリセから信用や信頼を寄せられつつあるのだと思います。彼女は間違いなく変わりつつありますが、それは生来の性格へ戻りつつあり、その変化の一端はアレンヴァルドの影響が担っていたはずです。

――パッチ5.55ではアルフィノとアリゼーの父であるフルシュノが登場しました。これまで第七霊災回顧録では登場していましたが、改めてキャラクターとして登場させる際に気を付けたことなどがあれば教えてください。

吉田氏:これまでの彼の言動、そしてイメージを崩さないことがベースにありました。彼がお話しした内容は、まだほんの一部であり、彼がどんなキャラクターであり、何を大切に思っているのかは、ぜひ「暁月のフィナーレ」にてお確かめください。ルイゾワにはじまり、「FFXIV」とはルヴェユール家の物語でもあるからです。

――最後のイベントバトルでは暁のメンバーを代わる代わる操作でき、普段使わないジョブを使う機会にもなってとても楽しかったです。ワンボタンコンボなどはかなり好評だったと思いますが、拡張パッケージという節目でバトルアクションが変わることへの布石でしょうか?

吉田氏:いいえ、特にそのような意図はありません。次々とジョブが入れ替わるため、ストーリー体験とバトル体験の双方を、無理なくプレイしていただくため、このような対応をとりました。アクション数が少なすぎると、暁の面々を表現する幅も狭くなってしまうため、これを解決するため、という意図が大きいです。

――グ・ラハが戦闘中にジョブチェンジをしたので大変驚いたのですが、あれはシャーレアンの賢人だからこそ成せる技なのでしょうか。また、他のメンバーが使うスキルもプレイヤーが使うスキルとは効果が違うものが多いですが、言うなれば「シャーレアン式」ということでしょうか?

吉田氏:ラハ君はオールマイティな上に、特殊な血や経験を持っていますしね……。そもそも暁の賢人たちのジョブ名を、できるだけプレイヤージョブと別にしたのは意図的です。特にヒーラーについては、フェイスとしてバトルに参加する際に、よりAIを賢くするために、独自の技を持つ方がバランスをとりやすく、これをプレイヤーと同一ジョブで行ってしまうと、「そんな技持ってない!欲しい!」となってしまうためです(笑)。いずれにせよ、彼らはシャーレアンの賢人であり、これまで良く知られる系統とは、微妙に異なるジョブにもなれる、ということで……。

多くの謎が残る「YoRHa: Dark Apocalypse」――吹っ飛んでくるビルの話題についても

――パッチ5.5では「YoRHa: Dark Apocalypse」希望ノ砲台:「塔」が実装されました。「NieR」だけでなく「ドラッグ オン ドラグーン」の要素も散りばめられており、“The ヨコオワールド”という感じで非常に楽しませてもらいました。プレイヤーからの反応はいかがでしたか?

吉田氏:ストーリー面、バトル面、双方においてご好評の声をいただきました。バトル関連のギミックについては、今回のクロスオーバーコンテンツの制作が決まった頃から、長く温めたり、開発してきたシステムによって実現しているため、開発チームとしても気合が入っていました。

ストーリー面は、ヨコオさん(※ヨコオタロウ氏)作品に馴染みの薄い方には、「ややわかりにくい」という感想もいただいていますが、「DoD」要素も含め、「想像、妄想、予想」が入り乱れる内容になっているため、これはこれで今回のクロスオーバーの味だと思っています。今後ヨコオさん作品に触れた時、わかるものもあるのではないかと……。ちなみに僕は、「え、これをここでやってしまうの?!」という驚愕があり、その分だけ、実装の際にかなり細かく演出指示を行いました。カットシーンにこれだけ細かくあれこれ言うのは、久しぶりだったと思います。

――4ボスの「偽造された神」戦ではビルが飛んできますが、あれは噂通りスクエニ社屋なのでしょうか? あのギミックが生まれた際のエピソードなどがあれば教えてください。

吉田氏:ビルを吹っ飛ばしたのは開発チームからのアイデアですが、ヨコオさんから「ビル名を決めたい」というお話もあり……。ただし、「スクエニ社屋か」と聞かれましても、私共が開発を行っているビルは、自社ビルではございませんし、わたくしには何とも申し上げられません。エピソードはありますが、恐ろしくて触れられないので、ここで勘弁してください……。

――吉田さんが「YoRHa: Dark Apocalypse」のストーリーを最後まで読んだ時の感想や、開発チーム内での反応などを教えてください。

吉田氏:やはり「どこまでヨコオさん作品を深く考察しているか」で、反応はかなり違いました。シナリオ調整やカットシーンに関わっているスタッフにも、ある意味全部は伝えられない(これは作品性のため)部分もあり、演出意図の汲み取りや表現には、かなり注意を払いました。僕は自分で予測を立てて、根拠をヨコオさんと齊藤P(※齊藤陽介氏)に提示して、演出内容を確認したりもしました。この辺りは、「FFXIV」開発チームが「ゲームガチ勢」でもあるため何とかなりましたが、かなりギリギリまで粘って開発していたのも事実です(笑)。

「暁月のフィナーレ」に向けて「漆黒のヴィランズ」を振り返る

――「暁月のフィナーレ」に向けて、ぜひ「つよくてニューゲーム」を使っておさらいをしておいて欲しいというお話がありましたが、特にこれまでの中で重要なエピソードがあれば教えてください。

吉田氏:これは英語インタビューの和訳によってちょっと意図が変わって伝わっています。もちろん、「つよくてニューゲーム」を使い、新生~漆黒までの物語をおさらいしておくと、より細かなエピソードが知れる部分はあると思います。ですが、皆さんお忙しいでしょうから、これまでの物語で「お気に入り」があれば、そこを復習しておくと、良いのではないか、という意図になります。「暁月のフィナーレ」は、「FFXIV」における一回目の区切りでもありますので、登場キャラクターが非常に多いのです。カメオ出演も含め、知っていればこそニヤリとできる部分もあるため、お気に入りのキャラ関連の復習でも良いかもしれません(笑)。

――「漆黒のヴィランズ」、そしてパッチ5.Xシリーズが完結しましたが、開発当初から大きく変わった点や、物語を作っていく中で変化していったエピソードなど、今だから言える開発秘話などがあれば教えてください。

吉田氏:「漆黒のヴィランズ」に限らずですが、拡張やメインストーリーが、途中から大きく変わるということは、これまでも殆どありません。細部が多少変わることはあっても、大きな筋は変わらずなのです。そうでなければ、伏線が意味を成さなくなりますし、ストーリー全体を貫く読み味も変わってしまうからです。秘話というよりも、5.Xシリーズは、世界中が新型コロナウィルスの渦中にあり、我々も開発の在り方や、ライフワークバランスのとり方を、今一度根本的に考えるきっかけになりました。改めて世界中のプレイヤーの皆さん、ファンの皆さん、メディアの皆さんに支えられ、今の「FFXIV」がある、と認識させてもらいました。多くの人に励まされ、応援されていることが、我々の誇りです。

――最後にパッチ5.Xシリーズの総括と、「暁月のフィナーレ」を楽しみにしているプレイヤーの方へ向けてメッセージをお願いします。

吉田氏:そもそもMMORPGにおいて、ストーリードリヴンというゲームデザインであることは、非常に大きなチャレンジです。その上で今回は、主人公であるプレイヤーキャラクターを「より強く主人公」として扱い、鏡像世界へ向かい、光に溢れた世界を闇で塗りつぶす、というかなりトリッキーな冒険がコンセプトでした。まずは、これを作り上げてくれた開発チームにお礼を言いたいですし、その物語を世界中に広げてくれた運営/宣伝チームにも感謝です。そしてなによりも、その冒険の主人公となり、反逆者の物語を完結させてくれた、プレイヤーの皆さんに最大限の感謝をしたいです。

その反逆者の物語を終え、託された色々な想いを抱いて、いよいよ「ハイデリン・ゾディアーク編」の終幕が描かれます。もちろん、「FFXIV」はその後も壮大に続いていきますが、まずは一回目の終わりの物語「暁月のフィナーレ」を体感してください。新たなチャレンジも盛りだくさんですので、ご期待ください!

――ありがとうございました。

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