【G-STAR 2014】ゲーム開発の外部委託が活発に―グラフィックスやサウンドの専門会社に動向を聞いた

ゲームの開発作業は、一社だけで行われるものではない。ゲームエンジンが分かりやすい例だが、他にもグラフィックスやサウンドなどの分野でも、外部委託は当たり前のように行われている。その一例を紹介しよう。

去る11月下旬に、韓国最大のゲームショウ「G-STAR 2014」が、韓国南東部にある都市の釜山にて開催された。公式発表によると、4日間の開催期間で延べ20万509人の来場者が訪れており、一概に比べられるものでもないが、「東京ゲームショウ2014」(こちらは4日間で25万1832人)に迫る勢いともいえよう。

同じゲームショウでも「東京ゲームショウ」と「G-STAR」は方向性が微妙に違っているのだが、その中の一つとして、G-STARでは一般来場客向けのエリアとは別に、ゲームメーカー同士がビジネス目的でコンタクトを取るためのエリアが広く設けられていることが挙げられる(※注)。韓国にとってオンラインゲームは重要な輸出産業であり、G-STARは国内外のメーカー間を繋ぐハブとしての役割も担っているわけだ。

※注:一般的に法人相手のビジネスを“BtoB”(Business to Business)、顧客向けのビジネスを“BtoC”(Business to Consumer)と呼ぶ

G-STAR会場の全体図。図中の(1)がBtoCエリア、(4)がBtoBエリアだ。ぱっと見では両者が同じくらいの面積に
思えるが、実はBtoBエリアは建物の「2フロア分」を丸々使っており、とんでもなく広い
BtoCエリアは東京ゲームショウなどでもお馴染みの
“ゲームショウ”そのものの雰囲気
BtoBエリアには一般来場客は入場できない。国内外から
業界人が集まり、そこかしこで商談が行われる

その性質上、BtoBエリアでは派手なステージイベントは無く、ブースガールが手を振ってくれるわけでもない。取材する側としては少々寂しくもあるが、目を凝らして歩いていると、おや、といったネタに遭遇することもある。今回は、BtoBエリアに出展していた「VISUAL DART」「STUDIO DOMA」を通じて、業界動向の一例を紹介してみたい。

ゲームグラフィックスに関するあらゆる業務を手がける「VISUAL DARTS」

VISUAL DART 代表取締役 Brian氏
VISUAL DART 代表取締役 Brian氏

「VISUAL DART」は、グラフィックスに関する、あらゆるニーズに対応する会社だ。今回の取材では、代表取締役を務めるBrian氏に直接話を聞くことができた。

近年はゲーム機のスペック上昇に伴い、高品質なグラフィックスの需要が益々高まってきている。実際のゲーム開発においては、特に初期~中期の段階で、コンセプトアートやキャラクターデザインを手がけるため多くの作業が必要だ。しかし、開発作業が中盤以降に差し掛かると、バランス調整などの作業が中心になるため、こういったグラフィックス関連のニーズは次第に減っていく。

社内で次々と新規タイトルが稼働していれば良いのだが、実際にはなかなかそうはいかない。また、グラフィックス関連のスタッフは一人前になるまでに長い時間を要するので、プロジェクトが終盤に差し掛かる度に解雇するのは現実的ではない。要するに、一般的なゲーム開発会社が内製でグラフィックスを総て手がけるのは難しいという話で、こうした背景のもと、外部委託が盛んになってきているとのことだ。

VISUAL DARTが手がける業務はケースバイケースで、言葉を変えると、グラフィックス関連であれば大半の要望に最適な価格で応えられることをウリとしている。ゲーム開発会社から提供されたイメージを元に、3Dモデル/テクスチャ/アニメーション/エフェクト/UI/アイコン等を作り上げたり、あるいはコンセプトアート/イラストを自ら描いたり、さらには外部委託ではなくゲーム開発の企画レベルから参加することもあるそうだ。

実際、あるPCオンラインゲームの事例では、最初から最後まで二人三脚で開発し、期間が足掛け5年に渡ったこともあるという。同社は2001年の創業以来、さまざまな業務を通じて業界内で信頼を培っており、少なくとも韓国ではグラフィックス関連のリーディングカンパニーを自負しているとBrian氏は胸を張る。

これまで手がけてきたタイトルの数は枚挙に暇がないそうだ。契約の関係上公表できないのも多いそうだが、例えば日本でも名前が知れ渡っているタイトルでは、直近だと「メイプルストーリー2」「デスティニーオブ スピリッツ」「Naughty dogが次にリリースする某人気シリーズのナンバリング最新作」など。メーカー単位では、NCsoft、Nexon、SCE、SEGA、GREE、Naughty dog、Wemade、Neowiz、L&K Logic Korea、CJ Games、Tencentをはじめ、国内外の大手メーカー多数と契約している。

現在の社員数は70名弱で、スタッフの割合は、“3Dモデリング:イラストレーター:アニメーション”の比率が約4:1:1。AAA級のタイトルからモバイルゲームまで、常時10タイトル前後のタイトルに関わり、続々と優れたグラフィックスを造り続けている。

近年はモバイルゲームが急成長しており、それによりグラフィックスを外部委託に出す動きが更に加速しているとBrian氏は話す。ゲームを開発する側にとっては、モバイルゲームは従来のPCオンラインゲームなどと比べると、第一印象が大事になるため、これまで以上にグラフィックスには力を入れたいという背景がある。しかし上記の理由があり、中小のゲームメーカーが高いスキルを持ったスタッフを常時抱えておくのは難しいわけだ。モバイルゲーム市場の盛り上がりを見ても分かるように、VISUAL DARTに対する受注は増え続けており、今回のG-STAR 2014への出展時は、日本と中国のメーカーからの問い合わせが特に多いそうだ。

サウンドを専門に扱う「STUDIO DOMA」

STUDIO DOMA ディレクター Seung Hyuk Yang氏
STUDIO DOMA ディレクター Seung Hyuk Yang氏

VISUAL DARTの取材後、同じくBtoBエリアにブースを出展していた、サウンド全般を専門に扱う「STUDIO DOMA」のスタッフに短時間ながら話を聞くことができた。グラフィックスと同様、サウンドに関しても外部委託が普通に行われているのだが、少なくとも技術面に関しては、CDにより生音が収録できるようになってからは、劇的な進化は長らく無かったという。

しかし、ここ2~3年の間にモバイルゲームの受注が一気に増えており、このプラットフォームで受け入れられる音作りの研究に迫られている。なにしろ2年前の時点では、PCオンラインゲームとモバイルゲームの受注比率が“7:3”だったのが、現在は“2:8”と一気に逆転しているのだ。また、そのほかには現在韓国ではPlayStation4が絶好調で、輸入ゲームタイトルの吹き替え業務にも注目しているそうである。

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