スクウェア・エニックスが2013年8月27日に発売を予定しているPS3/PC用ソフト「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア」。ついに発売日が決まり、新たに公開されたトレーラーではPS4版の発売も発表となった。それを受けて、本作のプロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏にインタビューを行った。
今回のインタビューでは、PS3版/PC版のソフト発売に関することを始め、E3 2013の開催に合わせて公開された最新トレーラーの見どころ、今後のβテストでプレイできることなどについて伺った。また、5月30日のプロデューサーレターLIVEで放送されたものや、すでに発表済みの内容もあるが、新たに搭載されるゲームシステムについても話を聞くことができたので、6月14日から開始となるβテストフェーズ3を前にチェックしてほしい。
PS3版/PC版のパッケージや特典、今後のテストについて
――2014年にPS4版を発売と発表されました。まだ時期は出されていませんが、意外と早い印象を受けました。
吉田氏:もともとベースとなるPC版がありますし、すでに発表している通りDirectX 11への対応も行いますので、それと同時並行でPS4版の開発を進めていきます。
――PS4版について今お話しできる範囲で教えてください。
吉田氏:PC版とPS3版を2013年8月27日に発売しますが、PS3版をご購入いただいた方は、PS4本体さえあればそのままセーブデータを引き継げます。PS3版からプレイしていて良かったと思っていただける施策をSCEさんとお話しているところです。すでにPS3本体をお持ちの方は、そのままPS3でプレイを始めていただいて、PS4を購入したタイミングで乗り換えていただくことも可能です。
――なるほど。PS4版のお話については今回はここまでにして、発売日が決まったPS3版についてお伺いさせていただければと思います。まずPS3版はパッケージで購入した場合もHDDへのインストールは必須でしょうか?
吉田氏:はい、そうなります。
――初期型PS3、例えば20GBモデルでもプレイできるのでしょうか?
吉田氏:容量さえ足りれば遊べます。ただ、PS3のシステムもかなりアップデートされてきていますし、システム必要領域やほかのゲームデータなどで、20GBだとHDDを整理していただかないと足りなくなってしまうかもしれません。SCEさんが告知されている通り、自己責任になってしまいますが、HDDを換装するのもひとつアリかなと。
――仰る通りHDDの換装は自己責任になりますが、SSDにしたらロード時間が短くなるといった検証はされていますか?
吉田氏:僕らがロード時間を短くしようとクライアント側でがんばるのは勿論ですし、かなり高速化していますが、やはり物理的な速さを超えることはできません。
PS3版だけでなくPC版もですが、「FFXIV」はMMORPGなので、HDDのデータとメモリキャッシュの入れ替えをかなり高速に行っています。物理的にHDDからデータを読み込み、メモリに展開して画面に表示させる中で、やっぱり一番時間がかかるのがHDDから読み込む部分になります。読み込み速度が遅いと、シークエラーが発生してリトライする際にも影響しますので、物理的にHDDが速ければ速いほど読み込みも高速になります。が、もちろん標準で十分に遊べるようになっていますし、速さにこだわる方が色々お試しくださればと。
――周辺機器についてもお伺いしたいのですが、PS3版ではチャット用にキーボードは使えるのでしょうか?
吉田氏:ソフトウェアキーボードが標準機能として存在しますが、USBポートにキーボードを接続していただければもちろん使えます。キーボードを使った方がより快適になると思いますが、必須にはしていません。
――PS3版でキーボード+マウスの操作をすることは可能ですか?
吉田氏:キーバインドが豊富なゲームでもありますので、ショートカットに色々割り当ててしまえば大丈夫ですね、マウスも動きますし。お好みでどうぞ。
――PS3版と言えば、「ニコニコ超会議」でメモリ最後の割り当てを検討されていましたが、もう決めたのでしょうか?
吉田氏:決めました。ティアリング防止とプレイヤーキャラクターの顔の影をキレイにすること、そのどちらを取るか話をしていましたが、実は放送を見ていた開発スタッフが、お客様の反応を見て発奮したらしく、「どっちもやる!」と言って両方入れました(笑)。
メモリは顔の影の領域に割り当て、ティアリングは描画処理的に回避して、PS3の計算精度でも、顔の影はかなりキレイになったと思います。やっぱりスクリーンショットの撮影にこだわる方もいらっしゃるので、色んな状況で見栄えを確認できるよう、キャラクタークリエイション中に変えられる背景の数も増やしています。
――これはPS3版に限らずですが、コレクターズエディションが品薄の状況です。今後増産の予定はあるのでしょうか?
吉田氏:特典アイテムの中には作るのに時間がかかるものもあるため、実はおいそれと増産を掛けられないのです。もう一度、何千個か追加するタイミングを検討していますが、それも元々あったストックから出すだけですので、極端な増産は今のところ予定していません。
――ダウンロード版は予約特典の対象になるのでしょうか?
吉田氏:今月から「スクウェア・エニックス e-STORE」でダウンロード版の予約が開始となります。そこでも数に限りがありますが、特典が付くダウンロード版も用意しています。
――ではアーリーアクセスが欲しい人は通常版もしくはダウンロード版を予約して、発売後のアップグレードを利用すればインゲーム特典も手に入る、という感じになりそうですね。ちなみにDL版はe-STORE以外での販売予定はあるのでしょうか?
吉田氏:今のところ日本では「スクウェア・エニックス e-STORE」専売になります。
――PS3版のDL版の状況はいかがでしょうか?
吉田氏:PlayStation Storeでの配信に向けて現在SCEさんと調整しています。SCEさんとしてもMMORPGが初めてですし、グローバルで歩調を合わせなければいけないため、最終的にDLのスタートができるのは発売日近くになってしまうかもしれません。
――「旧FFXIV」のパッケージを持っている人に向けた無料期間がありますが、パッケージを持っていてもレガシー(「旧FFXIV」で三ヶ月以上の課金を行った人)ではなく、なおかつアーリーアクセスの権利が欲しい場合は予約が必要になりますか?
吉田氏:はい、そうなります。アーリーアクセスは新規向けの方への施策です。以前からフォーラムなどで、レガシーを取得された方や、「旧FFXIV」をお持ちの方を優遇しすぎて、新規の方への対応が心配といった意見もありますが、新規のプレイヤーさんにたくさん来ていただき、「新生FFXIV」をプレイする仲間を呼び込むことが、これまで応援してくれた方への最大の恩返しだと考えています。だからこそ新規の方に向けた施策を取っており、新規の方に負けないぐらいの特典を…と思って実行したことが、そもそものレガシー権利です。
これらは特典のバランスをどう考えるかという話なので、とても難しいのですが「旧FFXIV」をプレイされていた方は、クライアントも無料で配布させていただきますし、無料で「新生FFXIV」をプレイしていただける期間を作りました。そこでぜひ「新生FFXIV」を触って、どれくらい変わったのか、どれくらい別のゲームになっているのかを見ていただき、「これだったらもう一回やってみよう」と思っていただければ幸いです。
――6月14日からはβテストのフェーズ3が始まり、三都市解放となります。リムサ・ロミンサとウルダハは最初から選択できるのでしょうか、それともグリダニアから旅立つという形でのみ解放されるのでしょうか?
吉田氏:「新生FFXIV」から追加する巴術士以外のバトルクラスは全て解放しますので、リムサ・ロミンサやウルダハからスタートするバトルクラスを選んでいただければ、最初からグリダニア以外の都市でもプレイできます。僕がよく徹夜していると言っているのは、三都市を解放することで、尋常ではないほどのチェックボリュームがあるからです(笑)。漁師だけはまだプレイできませんが、それ以外のギャザラーとクラフターも解放します。
――開始する都市が違うことでプレイできないクエストなどは出てくるのでしょうか?
吉田氏:序盤はあります。「新生FFXIV」はまずプレイヤーが一介の冒険者であるところからスタートしますので、王様に会って世界を救うといったスケールの大きな話がいきなり展開するわけではありません。レベル15までは立身出世編とでも言いますか、身近な事件を解決しながら重要なキャラクターたちと出会い、少しずつ都市の中での大きな問題に遭遇し、それを解消すると重要な任務を受け、ほかの都市に旅立っていくという流れになっています。そこまでは都市ごとに独自のストーリーが展開しますので、ひとりのキャラクターだけでは体験できないですね。ただ、それ以降は都市ごとの流れが合流してひとつになります。
――キャラクターを引き継いでプレイする場合、開始都市はどうなるのでしょうか?
吉田氏:最初にログインする際、どのバトルクラスで始めるかを選択していただきますので、それに紐付いて開始都市が決まります。
――新規も引継ぎの場合もバトルクラスを選択することになるんですね。
吉田氏:そうです。プレイヤーの方の中にはギャザラーやクラフターしか育てていない方もいらっしゃるので、メインのバトルクラスを選んでいただきます。レベルが高いクラスに限定されるわけではなく、自由に選択できるようになっていますので、仮に剣術士がレベル50でそれ以外のクラスが全てレベル1の場合でも、レベル1からのスタートで良ければほかのバトルクラスを選択することも可能です。
――キャラクターの引継ぎについては、レガシーじゃない方も可能でしょうか?
吉田氏:全データをコピーしますので可能です。
――選択可能なワールド(サーバー)はどうなるのでしょうか?
吉田氏:βテストのフェーズ3から本番仕様となっており、日本のデータセンターにあるワールドと、北米・ヨーロッパ用のデータセンターに分かれた状態になります。その中にレガシーというワールドも含まれていますので、引き継いだキャラクターでテストしたい場合は、自分が元々いたレガシーワールドを選択してゲームを始めていただく形となります。新規に始める場合、どこのワールドにでもキャラクターを作ることができます。また、正式サービス後には申し込み制のワールド移転サービスもあります。
一部マスクしているコンテンツとレベル制限があること、フェーズ3の途中からコンテンツファインダーを負荷テストのためにテスト導入すること以外は、ほとんど製品版と変わらない状態です。あまりテストという印象はしないかもしれません(笑)。
――ワールド移転のサービスは、一度移行したらほかのワールドに移れない期間はあるのでしょうか?
吉田氏:あまりペナルティを付けておらず、現状は3日程で考えています。「ファイナルファンタジーXI」(FFXI)では、競売を見て一番安い場所でほしいものを購入して、また元のサーバーに戻るといったプレイや、いわゆるRMT業者の市場価格釣り上げなどもあり、長めに期間が設けられています。ですが「新生FFXIV」ではレアアイテムの価値観が「FFXI」とは違うため、「友達がいる別のワールドに移りたい」といった気軽な感じで移行できるようにしたいと考えています。
ただ、ワールド移転に関してはどうしても人的コストとサーバーコストが必要になってしまうのと、ハラスメント問題などもありますので、無料ではなく有料サービスにさせていただく予定です。
「FINAL FANTASY XIV “CRYSTAL’S CALL”」トレーラーの見どころやゲームシステムについて
――今回の映像では蛮神や重要キャラクター、これまであまり触れられてこなかったストーリーの一端があったりと、目新しい内容が盛りだくさんです。このトレーラーの制作コンセプトを教えてください。
吉田氏:今回のトレーラーでは、「ファイナルファンタジー」(FF)であることと、「XIV」であることを強くお伝えしたかったというのがあります。そしてなにより「ゲーム」であること、ですかね。クリスタルに向かって過去の「FF」が全部集まっていく最初のシーンについては、色んな「FF」の要素を入れることで、“FFらしさ”を感じてもらえるようにしました。
MMORPGにありがちなカメラを引いて“ダンジョンにみんなで行く”といったイメージよりも、ストーリーもしっかりあるところを見ていただきたいです。カットシーンにはボイスが付きますし、スタンドアローンの「FF」と変わらない、豪華なストーリーとグラフィックが楽しめるゲームであることを感じてほしいと考えました。チョコボや魔導アーマー、シドが登場するのもそうですし、リミットブレイクの発動シーンがあるのも、皆さんが知っている「FF」であることを強く押し出すためです。
――なるほど。あくまでトレーラーであって、オープニング映像は別にあるのでしょうか?
吉田氏:これはダイジェストなのでオープニングとは違いますね。オープニングムービーはフェーズ3が始まるとすぐに見ることができます。βテスト中ということで、かっとシーンのボイスはまだ公開していませんが、序盤のレベル20までのシナリオも全公開ですし、イフリートと戦って決着が着くところまでプレイできます。
――今回のトレーラーは「新生FFXIV」を詳しく知っている方とそうでない方、見どころが違う内容になっていると思いますが、それぞれの見どころはどこでしょうか?
吉田氏:新規に始める方には、「なんかすごいな!」と思っていただけるだけでよいかなと。「FFだなあ」と。「FF」シリーズのタイトルですのでグラフィックに注目される方が多いと思いますが、イフリートやガルーダはこれまでと少し違うデザインでありながら、吉田明彦の「FF」らしい世界というのは変わっていません。ですので、スタンドアローンの「FF」と変わらないところを楽しんでいただきたいと思います。
それからクラシック「FF」ファン、コアゲーマーにニヤっとしてほしくて、ゲームプレイ/ゲーム画面を強く推しています。「FF」では恋愛がテーマになっている部分もありますが、今回は明るい話、重い話のメリハリをつけたシナリオになっているので、トレーラーでは比較的明るい面は落としました。今回は「殺す」「殺さない」といった物騒なシーンも多くなっています。このトレーラーは全て実機映像なので、プリレンダリングのシーンも一切無しです。
「旧FFXIV」からのプレイヤーの方には、「時代の終焉トレーラー」のようなシーンがあるところを見ていただきたいですね。全てインゲームのリアルカットシーンなので、それを踏まえて「ダラガブが落ちてきているシーンは何なんだ!?」と、いろいろ想像してみてください。βテストのフェーズ3ではまだ見られない、リミットブレイクのレベル3を初めて公開していたり、公開されたカットシーンからどんなお話になるのか推測してみてください。
――リミットブレイクは戦闘でゲージを溜めて、それが一定以上になったら発動するという流れだと思いますが、発動するのはパーティリーダーだけといった制限はあるのでしょうか?
吉田氏:いえ、誰でも発動できます。開発チームがプレイしていると、「どうすんの?」「押すの?」「誰が?」「早く押して!」のような展開になることがあり、見ていても、やっていても面白いですよ(笑)。
――発動できる技はロールによって変わってきますが、発動した人のロールが影響するのでしょうか?
吉田氏:そうです。リミットブレイクは、レベル3をいつでも使えるという訳ではなく、シーンに応じて溜められるゲージのレベルが変わります。例えばストーリー上で戦うイフリートのレベルはそれほど高くありませんので、そこではリミットブレイクのレベル2までしか発動できません。しかしレベル50のイフリートになると、レベル3のリミットブレイクも使えるようになります。
ゲージはみんなで貯められますが、イフリート戦であれば「地獄の火炎」のダメージを軽減するための柱を一定時間以内に破壊したり、エラプション発動時にスタンを入れて敵の攻撃をキャンセルすると、“ファインプレイ”としてゲージのボーナスが入ります。もちろんヒーラーの行動に対しても、回復魔法がキレイに全員に入るとボーナスがあったりします。
――それからチョコボの戦闘シーンもありましたが、魔導アーマーもバディとして登場すると思います。チョコボと魔導アーマーの性能差はどうなるのか決まっているのでしょうか?
吉田氏:魔導アーマーはサービス開始後にアップデートの過程で検討していきます。シナリオで魔導アーマーが絡むエピソードがありますので、まずは手に入れてもらうところから始めようと考えています。
――チョコボの着せ替えはどのようになるのでしょうか?
吉田氏:アクションメニューに“バディ”というタブがあり、着せ替えや作戦命令の変更など、全てがここにコマンドとして存在しています。フェーズ3ではまだ着せ替えが仮のインターフェースですが、これらのコマンドをクロスホットバーに登録しておき、実際にボタンを押すと、チョコボ専用のウィンドウが開いて着せ替えができます。命令についても同じで、クロスホットバーに登録しておけば、戦闘中に「ディフェンスモードに入れ」とか「回復優先」といった命令をすぐに出せるようになっています。
――チョコボのレベルなど育成要素はどうなっているのでしょうか?
吉田氏:チョコボのレベルは、自分の今プレイしているクラスのレベルに自動調整されます。「新生FFXIV」ではプレイヤーが色んなクラスになれますが、例えば剣術士のレベルが35であればチョコボもレベル35、まだ育てていないレベル1の呪術士にクラスチェンジしたらチョコボもレベル1になります。
レベルはプレイヤーと同じになる仕組みですが、チョコボに新しいスキルを覚えさせることでチョコボを育てることができます。育成のためのポイントを貯めて、それを割り振って攻撃や回復、補助効果などのチョコボ用スキルを覚えさせる、というのが育成になります。
――仮にチョコボのレベルが35だった場合、プレイヤーのレベルに換算するとどれくらいの強さになる、といった目安はありますか?
吉田氏:それは難しい問題で…どんなスキルを獲得しているかによって変わります。チョコボの育成では縦に並んだスキルを順に獲得していくのですが、例えば最初はアタッカーとして育てていだけど、途中で方針を変えてヒーラーのスキルも覚えさせるといった育て方をすると、純粋なアタッカーとして育てたチョコボと比較した場合、当然アタッカーとしての性能は低くなります。その代り、アタッカーとしてもそこそこ活躍でき、ケアルも使ってくれる万能タイプになるので、一概にどれくらいというのは難しいですね。
――チョコボは倒されるとどうなるのでしょうか?
吉田氏:巣や厩舎に帰ってしまいます。ギサールの野菜を消費してチョコボを呼ぶため、アイテムがある限り何度でも呼べますが、倒されてしまった場合のペナルティはβ3の結果を見つつ、製品版までには確定させます。
――先日改めて公開されたロードマップに新しいFull Active Time Event(F.A.T.E.)の追加とありましたが、これまでとは異なるタイプのものもあるのでしょうか?
吉田氏:連続で発生する大きなF.A.T.E.や、モンスターがNPCを連れ去っていくものがあります。NPCが連れ去られてしまうと、一定期間ショップNPCがいなくなってしまいますが、今度はみんなでNPCを助けに行くというようなF.A.T.E.も発生します。NPCがいなくなると言っても、直接ゲーム進行に関わるようなNPCは平気ですのでご安心を。
――公式サイトの情報が少しずつ充実してきましたが、フェーズ3で導入される要素の中ではマテリアクラフトの紹介がまだです。このシステムはどういったものか教えてください。
吉田氏:装備を使いこんでいくと錬精度というものが上がり、その値が100%になると、装備そのものをマテリアという宝石にする“マテリア化”のコマンドが使えるようになります。マテリアクラフトは、そのマテリアを装備にはめ込んで強化するシステムです。装備品ごとにマテリアをはめ込めるスロット数が決まっており、そのスロット分だけリスクなくマテリアをはめ込むことができます。
ここまでがマテリアクラフトの基本的な仕組みですが、装備品のスロット数以上のマテリアをはめ込む禁断のマテリアクラフト、俗に言う“禁断”もあります。これは非常に低い確率でしか成功せず、失敗するとクラフトに使用したマテリアが壊れてしまいます。「旧FFXIV」と仕様が違うところは、どの装備品にでもマテリアをはめられるようになったことと、禁断に失敗した装備品が壊れなくなったことです。
マテリアで強化できるステータスの上限は、キャラクターのレベルに応じて決まっています。数値は仮の例えですが、レベル35では全身のマテリアを含めてストレングス(STR)は+5までしかできないといったように、制限が掛かります。全身にマテリアを付けられるからといって、STRだけを上げていれば上限に引っかかってしまうと思いますので、これまでとは異なりパラメーターデザインをどうするかという遊びが入っています。
さらに言えば、スロットが空いているところで確実にINTを稼いで、禁断でVITを狙ってみるなど、スロットの枠数をどう使うかも重要になってきますので、マテリアクラフトの活用方法も一辺倒ではなくなります。
――ほかにも仕様が変わったシステムはありますか?
吉田氏:大きく変わったのはアーマリーチェストですね。以前のプロデューサーレターLIVEではアーマリーボードと呼んでおり、これまでに仕様をひっくり返したりと試行錯誤してきました。今は武器防具専用のボックスがあり、カテゴリごとに25個の装備を入れられるという、割り切った仕様になっています。自分で移動させない限り、ドロップした武器防具はアーマリーチェストに入るので、もう一般アイテムの所持品のスペースは圧迫されないと思います。
ギアセットも、このアーマリーチェストにあるものの中で組む、という考え方になっています。ステータス画面から一発でギアセットの登録が行えますので、プレイヤーの皆さんからフィードバックいただいた問題は、これで解消したと思います。正式サービス開始時のアーマリーチェストに収納できる数は各カテゴリ25個になっていますが、25個では足りないという意見が今後出てくると思いますので、拡張の余地は残しています。
――今のクラスとは違うクラスの武器もアーマリーチェストに入るのでしょうか?
吉田氏:武器はメインアームという括りになっていますので、そこに全て入ります。全クラス共通のボックスだと思っていただければ大丈夫です。
――アーマリーチェストではなく通常の所持品に入れていないとできないことはありますか?
吉田氏:ないですね。アイテムそのものにサブコマンドがありますので、マテリアクラフトや染色なども直接行えます。
――染色はどのようにして行うのでしょうか?
吉田氏:各アイテムのサブコマンドから染色を選択し、カララントというアイテムを使って行います。同じカララントの中にも細かい色のバリエーションがありますので、例えば赤色に染めようと思った場合も、赤という括りの中から複数のタイプを選ぶことができます。
実際にPS3版をプレイしてみて
――キャラクタークリエイションでカスタマイズできる幅がかなり増えていますね。
吉田氏:βテストのフェーズ3からは、肌の色は192色から選択できるようになっていたり、身長は5つのパターンから選ぶのではなくスライドバーによって調整できたりと、カスタマイズの幅を広げています。オッドアイも自由に設定できますし、フェイスペイントの位置やデザインを左右反転させることも可能です。
これらはプレイヤーの皆さんからの要望が多かった部分でもありますが、「新生FFXIV」発売後には、髪型やフェイスペイントを変える遊び、いわゆる美容室のような要素を実装しようと思っています。ですので、髪型やペイントもこれで全てではありませんし、色数も増やせる余地は残しています。ゲームをプレイしていて「そろそろ気分を変えたいな」と思った時に、美容室で新しい髪型に変えたりできるよう、順次新しいものを追加していく予定です。
――美容室で変えられるものは髪型やペイントなど、肉体そのものに変化が起きない部分に限られるのでしょうか?
吉田氏:目の色はカラーコンタクトだと言ってしまえば、許容していいかなと思っていて(笑)、そこは変えられるようになっています。あまりにも無秩序に変えられるのではなく、おしゃれの範囲であれば、色々変えられるようにしようと思います。
――(フィールドに降り立ち)ほかに新しい要素は導入されていますか?
吉田氏:表情だけ一定時間変えられる顔エモーションが入りました。体育座りのようなポーズで泣き顔にして、なおかつ海岸沿いの夕陽というシチュエーションだったりすると、やるせなさがアピールできます(笑)。エモーションと組み合わせられますので、色んなパターンを試していただけると思います。
――以前に画面を見せていただいたときよりも、影の表現がすごく自然になっていますね。プレイヤー側でもグラフィックに関して環境設定を行った方がいいのでしょうか?
吉田氏:今回Deferred Rendering(ディファードレンダリング)という手法を取っていますので、自然光が上手く表現できている分、テレビのバックライトがあまりにも白い場合、色の濃淡が出なくなってしまいます。液晶テレビは個体差がありますので、プレイの際はぜひキレイに見えるよう調整していただきたいですね。
――キーコンフィグも実装されましたね。
吉田氏:ほかにもカメラの移動速度や水平/垂直方向のリバースをするかどうか、自キャラクターの頭装備の表示/非表示、マップ透明度の設定、ソロプレイ時のパーティリスト表示/非表示など、本当に世界一オプションが多いと思うゲームになっています。
クロスホットバーに関しても、通常はR2/L2ボタンを押しっぱなしにする必要がありますが、一度ボタンを押すとクロスホットバーが起動しっぱなしになる「トグル」というオプションも用意しています。サウンドの設定項目もありますし、How toも全て再表示できるようになりました。
――確かに、PCのオンラインゲームでここまでカスタマイズ可能なオプションは見ないです。
吉田氏:UIは皆川にたくさんのご意見をいただいていますが、ここまでUIにコストを掛けて、オプションを揃えているMMORPGは正直他にないと思いますので、ゴールには確実に近づいています。ぜひ最後のご声援をお願いします(笑)。
基礎のゲームシステムで言えば、サービスを開始し、アップデートで対応しても十分と思えるレベルまで仕上がってきたと思っています。ただ、今後のテストで初めて「新生FFXIV」をプレイされる方、PS3でスタンドアローンのゲームしかプレイしてこなかった方もいらっしゃるので、そういった方のフィードバックをいただきつつ、正式サービスのギリギリまで、ひとつでも上のレベルを目指して、最終調整を進めていきます。PS3版では人が集まりすぎると、さすがにある程度はフレームレートが落ちてしまいます。処理が重くなるシーンでの力の抜き方と言いますか、最適化はギリギリまでやろうと思っています。
これだけのクオリティのものがMMORPGで、かつPS3のハード限界を超えて動いていることそのものが脅威的だと思っていますので、そこは開発チームに誇っていいと話しています。これからもβテストのフェーズ4、アーリーアクセス、そして発売日に向けて、快適さをもう一段上げられるよう、最後の最後まで気を抜かずに頑張ります。
――フェーズ3からいよいよPS3版のテストも始まりますが、どういったところのフィードバックが欲しいと考えていますか?
吉田氏:何が分かりにくいか、という部分ですね。MMORPGである以上、どれだけ親切に作っても、銃で相手を撃つというFPSの基本より、分かりやすいゲームシステムにはならないと思っています。FPSは照準を合わせて引き金を引けば弾が出ますので、最低限それだけ覚えれば遊べますよね。MMORPGは必ずしもそうではありませんが、これからも遊びやすさのハードルを可能な限り下げる努力をしていきますので、何が分からなかったか、何が難しかったかのフィードバックをいただきたいです。
フィードバック対応にも2種類あり、コンテンツの攻略方法やクラス、ジョブの特徴など、レベル50になるまでに覚えたことを活かすことで、戦略性が高くなるように設計されている部分もあります。クリアすれば終わりのゲームを作っているわけではなく、何百時間、何千時間ものプレイに耐えうるだけの設計に基づいて開発していますので、設計思想上、変えられない根幹の部分は存在します。
ですがそれ以外、序盤からもう少し色んなスキルを覚えて使ってみたいとか、逆に覚えることが多すぎて辛いとか、そういったさじ加減の部分は引き続きどんどんフィードバックいただければと思います。
――今後のテストやサービスに向けて、ユーザーの方へメッセージをお願いします。
吉田氏:PS3版をお披露目するだけでなく、ようやく触っていただけるタイミングが来ました。発売日も告知させていただき、予約も始まりましたが、「新生FFXIV」には色んな見方があると思います。FFの新作が出る!という方、旧FFXIVから新生を楽しみにしていただいている方、旧FFXIVネガティブな情報を見ている方、色々です。僕らはこれからもどんどんPVや情報を出していきますし、βテストのフェーズ3、4と、ご自身の手で触っていただけるチャンスをたくさん作っていきますので、それらを見て、ゲームに触っていただけたらと思います。その上で、ご自分に合っていると思ったら、ぜひドップリとエオルゼアでの冒険を楽しんでください。
――ありがとうございました。
インタビュー内容は以上となるが、当日は少しだけPS3版の実機を触ることもできた。大きいモニタに画面を映し、目の前まで寄ってじっくり見ると、オブジェクトの端っこや影が少し荒いことが分かるが、普段プレイするぐらいの位置からでは、全くPS3版であることを感じさせないクオリティになっていた。以前は遠くに見える階段の影がチラついていたりしたのだが、それもなくなり、より自然な表現になっていたのは驚かされた。
こうしたPC版と遜色ないグラフィックはもちろん、ここまでやるかと思うほど豊富に用意されたUIのオプション、ボタンを押してからスキルが発動するまでのレスポンスのよさ、どれをとっても非常に高いレベルでまとまっていた。特にレスポンスの良さは、プレイを終えて吉田氏から「違和感ないですよね?」と聞かれるまで、まるっきり意識しなかったほどだ。
ただ、こういった良さは実際に触ってみないと分からないものだろう。今後は6月14日開始のβテストのフェーズ3を始め、オープンβテストに相当するフェーズ4、「旧FFIXV」のパッケージを持っている人に向けた無料期間など、インタビューで氏が述べているようにプレイできる機会が増えてくる。
そのため、少しでも「新生FFXIV」に興味を持っているのであれば、「『旧FFIXV』のことがあるから不安」「オンラインゲーム遊んだことないし…」といった何か心配事があったとしても、プレイを避ける理由をいったんすべて捨て置き、実際にプレイして本作の出来をぜひ自身で確かめてほしいと思う。
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