なぜグー・チョキ・パーの属性を撤廃したのか―ゲームシステムが大きく変わる「SDガンダムカプセルファイターオンライン」の開発&運営陣にインタビュー

CJインターネットジャパンは「SDガンダムカプセルファイターオンライン」において、5月29日に大型アップデート「変わる世界」を実施する。ゲームシステムが大きく変化する今回の大改変について開発元や運営チームにインタビューを行ったので、その内容を紹介しよう。

今回の大型アップデート「変わる世界」では、「SDガンダムカプセルファイターオンライン」(以下「SDGO」)の戦闘システムの核というべきグー(近接格闘型)、チョキ(万能型)、パー(遠距離射撃型)の三すくみの属性や育成要素の「オーバーカスタム」が廃止。これらに代わって、さまざまなカスタムパーツを装備させることでユニットをカスタマイズしていく「カスタムパーツシステム」が新たに導入される。

なぜ、ゲームシステムを根底から変えるほどの大改変を実施することになったのか。その狙いはどこにあるのか。開発元であるソフトマックスのオンライン事業本部 開発総括室長のソン・ギウォン氏と、バンダイコリアのデジタル事業部プロジェクトマネージャーのキム・ハンナ氏、運営元であるCJインターネットジャパンのパブリッシング事業部 統括プロデューサーの伴正史氏、同じくプロデューサーの鳴海大助氏にお話をうかがった。

今回のインタビューはこのようなインターネットを利用したテレビ電話システムを使って行われた。

ユニット育成における自由度を高めるべく大型アップデートを実施

――今回のアップデートはかなり大がかりな内容になっています。このような大きな改変を行うことを思い立った経緯を聞かせて下さい。

ソン氏:「SDGO」は韓国では今年で6年目になるのですが、最近はプレイヤーのプレイの仕方がパターン化してきたと感じていました。そこで、新たなシステムを導入することで新しい面白さをファンに提供したいと考え、韓国での6周年記念をきっかけに今回の大型アップデートを計画したわけです。どの方向で面白さを発展させるかいろいろ悩みましたが、ユーザーさんがもっと個性のあるユニットの育て方をできるようにしたい。「もっと自由度を高める」という部分にポイントを置いて、今回の改変を行うことにしました。

ソフトマックスのソン・ギウォン氏(左)<br />
バンダイコリアのキム・ハンナ氏。
ソフトマックスのソン・ギウォン氏(左)
バンダイコリアのキム・ハンナ氏。

――グー・チョキ・パーの属性の撤廃というのは特に驚かされました。

ソン氏:グー・チョキ・パーシステムはユーザーさんが6年間楽しんできたもので、これを無くして新たにカスタムパーツという要素を入れることでバランス的に問題はないかとか、システムを構築する上ではどうだろうとか、さまざまな疑問もありました。ですが、いろいろなテストの結果、もっと楽しさ・面白さを提供できるという検証ができたので実施することになりました。

――アップデート実施後の韓国でのユーザーの反応を教えてもらえますか。

ソン氏:結論から言わせてもらいますと、爆発的な好評を得ることができました。最初はやはり混乱がありましたが、新要素のカスタムパーツによるユニットの育成を導入したことによって、アップデート前よりも自由に機体を育てられるようになったと、ユーザーさんに非常に喜んでもらえています。

――では、伴さんと鳴海さんはこの大型アップデートの計画を聞いて最初どう思われましたか?

伴氏:思い切ったなというのが僕の第一印象ですね。

鳴海氏:衝撃でしたね。もともと属性ありきでユニットとかのバランスを取っていたので、根本から手を入れて大丈夫なのかなというのはありました。

伴氏:「SDGO」の根幹を変えてきたわけですからね。ただ、次の瞬間には「これはいいな」とも思いました。

CJインターネットジャパンの<br />
伴正史氏(左)と鳴海大助氏(右)。
CJインターネットジャパンの
伴正史氏(左)と鳴海大助氏(右)。

鳴海氏:対戦では間合いの調節がしやすい近接格闘型のグーが主導権を握りつつ、万能型のチョキが援護して遠距離射撃型のパーが後方支援というように、ユーザーさんのほうで属性の固定概念みたいなものができあがっていまして、ユニットの使い方が少し縛られているなと感じるところがあったんですよね。

伴氏:グー・チョキ・パーの三すくみというのは、戦略的にはすごく面白いシステムだと思います。ただ、鳴海が言ったようにグーを使う人、チョキを使う人、パーを使う人をユーザーさんたち自身でバランスを取らなければいけないという、多少敷居の高さがあったのも事実でして、そこを改善してほしいという意見はありました。

鳴海氏:これは対戦のハードルを上げている部分だったので、今回の属性撤廃によって敷居が低くなるのではないかと思っています。

――実際に今回の発表を受けた日本のユーザーの反応はどのようなものでしたか?

鳴海氏:やっぱりシステムが大きく変わるということで混乱は多少ありました。ただ、これまでは属性があることによって使用しにくいユニットが一部あったのも事実で、今後は自分の好きなユニットが使いやすくなるとか、そういう部分は好評かなという印象はあります。

伴氏:混乱と期待といった感じですね。本当に大きく変わりますので、そのことへの不安と楽しみにしているという両方の意見が出ています。

機体の特長はそのままにカスタムパーツで個性を付ける

――育て方によってユニットの性能はどの程度変わってくるんでしょうか。例えば格闘タイプでも支援機的な機体に育てるみたいなことは可能ですか?

鳴海氏:もともと持っている武装があるので、かつてのグー機体で長距離の敵を撃ち抜くみたいなことは難しいですね。ただ、例えばビームライフルを持つグー機体でしたらカスタムパーツでビームライフルの連射速度を上げて、グー機体ならではの機動力を活かしつつ、中距離からビームライフルを当てていくユニットに育てるみたいなことはできるかと思います。

伴氏:グーだった機体はやはり武装がパーではないので、パーのような遠距離主体で戦う機体にするというのはちょっとムリですね。ただ、これまでのような固定したものではなく、ある程度の幅は持たせられます。

ソン氏:補足になりますが、属性による三すくみはなくなりますが、これまで属性で持っていたユニットの基本的な個性の部分はそのまま残っているわけです。格闘型、万能型、遠距離型という基本的な特徴にプラスして、カスタムパーツでかつてのグー機体に長距離ユニット的な特性を持たせることができるようになったと考えてもらえればと思います。

属性による相性概念はなくなるが、格闘型や支援型などの機体の持つ基本的な特性はそのまま残る。

――カスタムパーツについて詳しく教えてください。

ソン氏:カスタムパーツは最大で4つ装備させることができます。パーツは射撃、格闘、装甲、突撃、強襲、重装、支援という7つの系統がありまして、それらを細分化すると全部で20種類くらいのタイプに分類されます。ユーザーさんはそれらを組み合わせて、好きなようにカスタマイズできるわけです。

――パーツは全部で何種類くらい登場しますか。

ソン氏:確認しましたところ、現在261種類のパーツが実装されています。

――すごい数ですね。その中で特に目玉になりそうなものを教えてもらえますか。

伴氏:例えば、これまでハイド状態のユニットの姿が見えやすくなるスキルがあったのですが、それがパーツのひとつになっています。そのほかにも中距離武装のバズーカの攻撃範囲を広げるとか、なかなかユニークなものがそろっていますので注目してもらえたらと思います。

――パーツの系統が7種類ありますが、最初にこの中のひとつを選択して、以降はその系統のパーツを装備していくということでいいのでしょうか?

伴氏:そうですね。

――なるほど。では、装備できるカスタムパーツの数はどのようにして決まるのですか?

伴氏:現在、実装されている機体はカスタム2から4までありますが、これが装備できるスロットの枠になります。カスタム2なら2個、カスタム4なら4個で、カスタム数の多い機体ほど有利ということですね。

鳴海氏:カスタム数は2~4でSランクのみ3まで。これはアップデート後も変わりません。

どの系統を選んでカスタムパーツをどう組み合わせていくか、プレイヤーのセンスが問われる。

――最初からスキルが使用可能になるというのも大きな改変のひとつだと思います。なぜそのようにしたのか理由を教えて下さい。

ソン氏:対戦において、ユーザーさんがより公平に戦える状況を作るためです。これまではユニットレベルが「エース」になることで初めてすべてのスキルが使用可能になるという形だったわけですが、対戦ではユニットそのものの性能で勝ち負けが決まる部分が大きいため、そこがライトユーザーさんにとっての壁になっていました。ですので、最初からすべてのスキルを使えるようにしてスタート時点の性能を揃えました。

伴氏:もとはスキルなしの時点が公平だったわけですが、カスタマイズの部分を楽しんでもらいたいのでスタート地点を引き上げちゃおうと。ユニットをくり返し使ってレベルアップしていけば装備できるカスタムパーツの種類が増えていくので、そこにつぎ込んだ労力を活かして下さいというのが今回の主旨です。

そもそもユニットの特性があって、ユーザーさんがそれを活かしたり伸ばしたりしていく場合、最初からスキルを使えないというのは弊害でしかないんですね。持っているスキルを使えてはじめて機体の特性を活かせるわけですから、経験値を稼いでスキルを解放していくといった、ユーザーさんの負担はなくしてあげようということです。

――最初からハデなスキルがバンバン使えたほうが楽しいですしね。ちなみに、これまでユーザーが育てたユニットの扱いはどうなるのでしょうか。

伴氏:経験値に関してはそのまま引き継がれます。これまでは「カスタムレベル」となっていたものがユニットのレベルになるわけですね。つまり、今まで育てたユニットは最初からたくさんのカスタムパーツが選べる状態になっていまして、それらを使ってカスタマイズできるわけです。

ユニットのレベルが上がるにつれて装備できるカスタムパーツの種類が増えていく仕組みだ。

――なるほど分かりました。これだけ大きなアップデートですから、実施までにいろいろな苦労やトラブルもあったでしょうね。

ソン氏:一番はやはり時間との戦いですね。今回は韓国での6周年という大きな節目があり、それに間に合わせなければなりませんでしたから、スケジュールがギリギリで週末も働きづめでした(笑)。ただ、スタッフたちはみんな「ガンダム」が好きですので、作業自体は楽しくできましたね。バンダイコリアさんのサポートも良かったですし、スムーズにアップデートできたと思います。

キム氏:普段は月に10個くらいの新ユニットを開発してアップデートするのですが、今回の場合は全ユニット……600機(韓国版)くらいなんですが、それらの性能をすべてチェックしなければならなかったので、徹夜とかザラでしたね。でも、最終的に全部クリアしてもらえましたから開発会社さんには非常に感謝しています。

――日本にローカライズするにあたって大変だったことは何ですか?

鳴海氏:一番は日本語化することですね。先ほどソンさんがおっしゃっていたように、カスタムパーツの種類が非常に多くて、それらをすべて日本語に直すのはかなり大変でした。

伴氏:韓国と日本の市場の傾向はやはり違っていまして、日本のユーザーさんが楽しめるように調整する必要があるのですが、そこも大変な部分でしたね。ただ、ソフトマックスさんもバンダイコリアさんもすごくサポートしてくれていますので、我々が思い描いている通りに導入できると思います。

――韓国の側から見て、日本と韓国のユーザーはやはり違うと思いますか?

ソン氏:初めて日本でサービスを開始した頃は、日本のユーザーさんにとってPvPはハードルが高いんじゃないかと思っていましたが、現在のデータやユーザーさんの状況などを見ると「戦う」ということを楽しんでいらっしゃる方が多くなっていると感じています。やはり勝負において勝ちたいと思うのは世界共通どこも同じだなと、その部分で大きな違いはないと思っています。違うのはガシャポンへの対応ですね。韓国では少し回していいものが出なければ、すぐ苦情を言ってくるんです(笑)。日本の場合はその部分も含めて皆さん楽しんでくれているようですね。

――日本人は子どもの頃からガシャポンに馴染んでいますからね。ところで、これは個人的興味なんですが、韓国で特に人気のあるガンダム作品は何でしょうか?

ソン氏:30~40代では「Zガンダム」が人気です。20代の若い人はやはり「SEED」や「OO」などの最近の作品が好きみたいですね。

キム氏:「ガンダム」は韓国でも非常に人気があります。20代や30代のファンが中心ですが、最近は「SDガンダム三国伝」が子どもに人気で、バンダイコリアには専用のブースがあるほどです。ですから「SDGO」のほうでも「SDガンダム三国伝」のユニットをさらに追加することを考えています。

アップデート以降の展開と新たなユニットの登場について

――今後やってみたいこと、温めているアイディアなどを教えてもらえますか?

ソン氏:ふたつありまして、ひとつはガシャポンです。ガシャポンで何度も同じユニットが出てくるとストレスになると思うので、かぶった機体を有効に活用できる合成システムのようなものを検討しています。もうひとつは勢力別イベントですね。例えば、連邦軍の週間では連邦のユニットに特典があるといったイベントの実施を考えています。

――それはすごく面白そうですね。

ソン氏:もちろんコンテンツの部分でも力を入れていきます。6年目ということもあって初期に導入したユニットはどうしても古いイメージがありますから、そういった機体をリメイクしていきたいですね。さきほども言った通り、「Zガンダム」は韓国で人気が高いので初期に導入したのですが、後から導入したものより強さの部分で劣っていたんですよ。そこで、Sランクにしてリメイクしたところ好評だったので、今後もそういった既存のユニットのリメイクを進めていこうと考えています。

――どのような機体のリメイクや新ユニットの投入を計画されていますか?

ソン氏:リメイクのほうはユニットの性能やステータスを変えるというよりも、新たな機能を追加する方向で考えています。例えば「SEED」では複数の敵に対して一斉に攻撃するマルチロックオンというものが登場しますが、それをいずれかの機体に導入するとかですね。現時点で私が言えるのはここまでです。

新規のユニットについては、外伝やスピンオフ作品に登場する機体の投入を計画しています。こういった作品の機体はコアなガンダムファンの方が好きだと思いますから、ぜひ期待していてほしいです。日本のユーザーさんの声があれば登場が早くなるかもしれませんよ。

伴氏:日本でもアンケート等を実施してユーザーさんの要望を開発会社さんのほうに届けていますので、強い期待の声があればフィードバックは可能だと思いますね。

――今回の大型アップデートに合わせて、いろいろなキャンペーンの実施を予定されていると思いますが、日本での今後の展開などを教えてください。

伴氏:今回のような大型アップデートは新しいユーザーさんがくるタイミングでもありますから、新規ユーザーさんが始めやすくなるようなキャンペーンを行う予定です。もちろん、既存のユーザーさんが楽しんでいただけるようなキャンペーンですとか、アイテムの販売、新規ユニットの投入なども計画しております。

――どんな新ユニットが投入されるのか気になるところですが。

鳴海氏:フリーダムガンダムのミーティア装備バージョンと、νガンダムHWS(ヘビーウェポンシステム)装備型の導入を6月に予定しています。

――人気の高い機体の登場ですね。やはり今回の大型アップデートにタイミングを合わせたんですか?

伴氏:そうですね。6月に「SDGO」が日本で3周年を迎えるので、それに合わせて日本のユーザーさんにビッグなユニットを用意したいというのもありました。

――分かりました。最後に日本のファンへのメッセージをお願いいたします。

ソン氏:今回のアップデートの目玉であるカスタムパーツの導入によって、ユーザーさんが好きなユニットを好きなように育成できるようになります。ご自身の個性を出すことができるので、その部分を存分に楽しんでいただきたいです。「SDGO」はこれからも変化し続けていきます。CJインターネットジャパンさんやバンダイコリアさんを通じて日本のユーザーさんのご意見はたくさん承っていまして、これからもみなさんの要望に応えていきたいと思っておりますので、よろしくお願いします。

キム氏:今回「変わる世界」というタイトルでアップデートを行うことになりました。今まで愛していただいたユーザーさんも、これから始められる新規のユーザーさんも、たくさん楽しんでいただけたらと思います。「SDGO」はガンダムを題材にしたPCのオンラインゲームの中で、登場する作品やユニットがもっとも多いと自負しています。ユーザーさんがさらに長く遊べるようにこれからも開発を続けていきますので、変わらぬご声援をよろしくお願いします。

伴氏:日本での3周年を迎えることができるのも、ひとえにユーザーのみなさんのおかげと感謝しております。これまで愛していただいた既存のユーザーさん、これから入ってこられる新規のユーザーさんのどちらにも、新しくなった「SDGO」を楽しんでもらえたらと願っています。

また、この3年間は運営と開発会社さんがつき合ってきた時間でもありまして、みなさんの要望をよりダイレクトに伝えてフィードバックするスムーズな関係が作れていると自負しています。これからもユーザーさん目線での運営を目指していきますので、よろしくお願いいたします。

鳴海氏:今回のアップデートでユーザーさんがユニットを自由にカスタマイズできるようになります。みなさん自分のお気に入りのユニットというのがあると思いますから、自分の好みの機体に仕上げて楽しんでプレイしてもらえたらなあと思っています。

――ありがとうございました。

SDガンダムカプセルファイターオンラインサービス終了

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